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権利関係の弱点問題リストアップ

H15~20年度までの権利関係の難問(正解率60%以下と推定される問題)を列挙してみます。

一覧表

年 度

個数

該 当 問 題 番 号

H15年

3問

〔問5〕・〔問6〕・〔問13〕

H16年

9問

〔問2〕・〔問3〕・〔問5〕・〔問8〕・〔問9〕・〔問10〕・〔問11〕・〔問13〕・〔問14〕

H17年

7問

〔問1〕・〔問4〕・〔問5〕・〔問6〕・〔問10〕・〔問11〕・〔問14〕

H18年

9問

〔問1〕・〔問2〕・〔問3〕・〔問5〕・〔問7〕・〔問10〕・〔問12〕・〔問13〕・〔問16〕

H19年

8問

〔問5〕・〔問7〕・〔問8〕・〔問9〕・〔問10〕・〔問14〕・〔問15〕・〔問16〕

H20年

8問

〔問4〕・〔問5〕・〔問7〕・〔問9〕・〔問10〕・〔問12〕・〔問13〕・〔問15〕

 

原因と対策

該 当 問 題

原 因 と 対 策

「民法の一般原則」

H18年〔問1〕・・正解率約25%

出題率が低いのでテキスト等の解説がない場合が多い→今後は理解が必要である。

「無権代理の複合問題」

H16年〔問2〕・・正解率約45%

H18年〔問2〕・・正解率約40%

代理制度は、基本であるが複合問題の場合、無権代理・表権代理制度等の知識内容の理解が不充分→知識の整理をしっかり行うこと。

「取得・消滅時効」

H16年〔問5〕・・正解率約58%

H17年〔問4〕・・正解率約58%

基本であるが複合問題の場合、知識内容の理解が不充分→知識の整理をしっかり行うこと。

H16年〔問3〕・・「各種の物権変動」・・正解率約47%

基本であるが複合問題の場合、知識内容の理解が不充分→知識の整理をしっかり行うこと。

H16年〔問9〕・・「解除と第三者との関係」・・正解率約50%

基本であるが複合問題の場合、知識内容の理解が不充分→知識の整理をしっかり行うこと。

H18年〔問3〕・・「停止条件付契約」・・正解率約57%

やや細かな知識が要求される問題→今後は知識の整理をしっかり行うこと。

H19年〔問7〕・・「担保物権」・・正解率約58%

留置権・質権・先取特権の勉強不足→今後は概要を押さえ知識の整理をしっかり行うこと。

「抵当権に基づく物上代位の可否」

H15年〔問5〕・・正解率約35%

H17年〔問5〕・・正解率約50%

抵当権は、担保物権中最重要のものであるにもかかわらず、実践的な勉強が不足→今後は具体例を意識した知識の整理をしっかり行うこと。

「抵当権と賃貸」

H17年〔問6〕・・正解率約25%

H20年〔問4〕・・正解率約55%

H18年〔問5〕・・・「抵当権の順位」・・正解率約25%

「根抵当権関連」

H15年〔問6〕・・正解率約17%

H19年〔問8〕・・正解率約25%

根抵当権は、そこそこ出題されるにもかかわらず、テキスト等の解説不足→今後は具体例を意識した知識の整理をしっかり行うこと。

H20年〔問5〕・・「詐害行為取消権(424条)」・・正解率約35%

債権者代位権と同様に出題歴はなかったテキスト等の解説不足→今後は概要・ポイントを絞り込み把握しておく必要がある。

H18年〔問7〕・・「連帯保証と物上保証人」・・正解率約45%

類似制度の差異に対する知識の整理不足→今後は具体例を意識した知識の整理をしっかり行うこと。

H19年〔問9〕・・「債権譲渡」・・正解率約35%

基本問題であるが、出題頻度が低いことからテキスト等の解説不足→今後は概要・ポイントを絞り込み把握しておく必要がある。

「売買契約と各種の関係」

H17年〔問1〕・・正解率約35%

H19年〔問10〕・・正解率約36%

売買契約に関連する各種制度は、テキストでは分散されて記述されているので整理不足→今後は知識の整理をしっかり行うこと。

H16年〔問8〕・・「賃料債務の相殺」・・正解率約40%

賃貸借に係る勉強不足のために応用がきかない→今後は賃貸借をしっかりと理解すること。

H20年〔問7〕・・「善管注意義務」・・正解率約45%

類似の制度が適用される場合の知識の整理不足→今後は知識の整理をしっかり行うこと。

H16年〔問10〕・・「瑕疵担保責任」・・正解率約20%

H20年〔問9〕・・・「瑕疵担保責任」・・正解率約58%

類似の制度が適用される場合の知識の整理不足→今後は善意・悪意の場合・何ができるのか知識の整理をしっかり行うこと。

H16年〔問11〕・・「組合契約」・・正解率約35%

マイナーであるために、テキスト等の解説不足→今後は共有との違い・概要・ポイントを絞り込み把握しておく必要がある。

「通常の賃貸借と異なる場合」

H17年〔問10〕・・「使用貸借契約」・・正解率約58%

H19年〔問14〕・・「一時使用目的の建物の賃貸借」・・正解率約45%

マイナーであるために、テキスト等の解説不足→今後は賃貸借との違い・概要・ポイントを絞り込み把握しておく必要がある。

「賃貸借・借地借家法関連」

H15年〔問13〕・・正解率約52%

H16年〔問14〕・・正解率約28%

H16年〔問13〕・・正解率約55%

H18年〔問10〕・・正解率約55%

H18年〔問13〕・・正解率約40%

H20年〔問13〕・・正解率約55%

H20年〔問10〕・・正解率約58%

分量が多く、出題頻度が高いが勉強不足→今後は民法上の賃貸借・借地・借家との違い・概要・ポイントを絞り込み把握しておく必要がある。

「不法行為関連」

H17年〔問11〕・・正解率約45%

H19年〔問5〕・・正解率約20%

出題頻度が高いが勉強不足→今後は特殊な不法行為について概要・ポイントを絞り込み把握しておく必要がある。

H18年〔問12〕・・「相続と各種制度」・・正解率約54%

H20年〔問12〕・・「遺留分」・・正解率約55%

分量が多いことから出題頻度が高いにもかかわらず勉強不足→今後は遺産分割・遺留分等のポイントを絞り込み把握しておく必要がある。

「建物の区分所有法関係」

H17年〔問14〕・・正解率約30%

H18年〔問16〕・・正解率約45%

H19年〔問15〕・・正解率約30%

H20年〔問15〕・・正解率約55%

出題頻度が高いが勉強不足→今後は概要・ポイントを絞り込み把握しておく必要がある。

 

H19年〔問16〕・・「登記」・・正解率約15%

出題頻度が高いが勉強不足→今後は概要・ポイントを絞り込み把握しておく必要がある。

以上により大略的な検討をしたが、受験生の弱点は明らかとなった。

*機械的「暗記」では、憶えては・忘れの繰り返しで多大な時間が必要となるが、理解をこころがけた方が時間は、節約できる。

 

それでは実際に解いてみましょう!

H18年〔問1〕・・・「民法の一般原則」・・正解率約25%

 次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 契約締結交渉中の一方の当事者が契約交渉を打ち切ったとしても、契約締結に至っていない契約準備段階である以上、損害賠償責任が発生することはない。

2 民法第1条第2項が規定する信義誠実の原則は、契約解釈の際の基準であり、信義誠実の原則に反しても、権利の行使や義務の履行そのものは制約を受けない。

3 時効は、一定時間の経過という客観的事実によって発生するので、消滅時効の援用が権利の濫用となることはない。

4 所有権に基づく妨害排除請求が権利の濫用となる場合には、妨害排除請求が認められることはない。

本問は、従来は出題されなかった「一般原則」を問う問題で、基本の手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

 

「解 説」・・・・正解(4)

(1)×。「契約締結前の損害賠償請求の可否」

確かに、契約を締結していない以上権利・義務は発生していないので損害賠償請求はできないのが原則である。

しかし↓

判例は、契約の交渉段階に入ると、相互に相手方の人格や財産を害しない信義則上の義務を負い、相手方に損害を及ぼしたときは,たとえ契約が締結されない場合でも契約責任として損害賠償責任があるとする。

           従って↓

「損害賠償責任が発生することはない」とするのは・・×。

 

(2)×。「信義則と権利行使・義務の履行への適用の可否」

確かに、信義誠実の原則は、契約内容等が不明確な場合の契約解釈の基準として作用する。

しかし↓

権利の行使や義務の履行は,相互の信頼関係が基本になるので、信義誠実の原則が適用され、制約を受けることとなる。

従って↓

「権利の行使や義務の履行そのものは制約を受けない」とするのは・・×。

 

(3)×。「時効の援用と権利濫用適用の可否」

確かに、時効は、一定の期間の経過という客観的事実によって発生する。また、権利の濫用とは、形式的には適法な権利行使であるが、実質的には正当な権利行使を逸脱したものである。

そこで↓

一定の期間の経過という客観的事実によって発生する時効制度においては、権利濫用は成立しないとも思え問題となる。

          この点↓

判例は、時効の効果は、当事者の援用という意思表示によって生じるので、当該援用をすることが、信義則に違反し、権利濫用になることがあるとする。

従って↓

「消滅時効の援用が権利の濫用となることはない」とするのは・・×。

 

(4)○。「妨害排除請求と権利濫用適用の可否」

確かに、所有権は、法律の制限内で、自由に使用・収益・処分ができるのが原則であり、当該所有権侵害の排除手段として妨害排除請求権が認められる。

そこで↓

妨害排除請求権の行使が正当である以上権利濫用とはならないとも思え問題となる。

しかし↓

判例は、形式的に適法な権利行使であっても、実質的に通常の社会倫理を逸脱したときは、その権利行使は、権利の濫用にあたる場合があるとする。

従って↓

「権利の濫用となる場合には、妨害排除請求が認められることはない」ので・・○。

 

H16年〔問2〕・・・「無権代理の効果」・・正解率約45%

 B所有の土地をAがBの代理人として,Cとの間で売買契約を締結した場合に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。

1 AとBとが夫婦であり契約に関して何ら取り決めのない場合には,不動産売買はAB夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内にないとCが考えていた場合も,本件売買契約は有効である。

2 Aが無権代理人である場合,CはBに対して相当の期間を定めて,その期間内に追認するか否かを催告することができ,Bが期間内に確答をしない場合には,追認とみなされ本件売買契約は有効となる。

3 Aが無権代理人であっても,Bの死亡によりAがDとともにBを共同相続した場合には,Dが追認を拒絶していても,Aの相続分に相当する部分についての売買契約は,相続開始と同時に有効となる。

4 Aが無権代理人であって,Aの死亡によりBが単独でAを相続した場合には,Bは追認を拒絶できるが,CがAの無権代理につき善意無過失であれば,CはBに対して損害賠償を請求することができる。

本問は、無権代理の効果を正確に理解しているか否かの複合問題。肢1は、判例の知識が必要・・・・パスするのはもったいない問題。

「解 説」・・・・正解(4)

(1)×。 「夫婦の日常家事と表見代理(民法110)の類推適用の可否」

確かに、民法761条は、夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、「連帯そてその責任を負う」と規定し、この「連帯そてその責任を負う」とするのは、判例は、法定代理権と解しているし、また、法定代理について110条が適用できるとする。

そこで↓

「不動産売買はAB夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内にないとCが考えていた場合」 でも、110条の類推適用ができるか問題となる。

この点↓

判例は、762条の「夫婦の財産の別産制」との調和の観点より、夫婦の一方が日常家事の範囲を超える法律行為をした場合については,相手方において,その法律行為が日常家事に関する法律行為の範囲内にあると信じたことについて正当の理由があるときには,民法110条の表見代理(権限踰越)の趣旨を類推適用され,その契約は有効となるとする。

しかし↓

本件のように、高額な「不動産の売却行為」は、「日常の家事に関する法律行為の範囲内」に該当しないし、相手方がそのように考えていた以上、110条の趣旨を類推して表見代理が成立しない。

従って↓

「本件売買契約は有効である」とするのは・・×。

原則

夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内→法定代理が成立する。

例外

夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲外であるが、相手方が善意・無過失で考えた時→110条の趣旨を類推して表見る代理が成立する(判例)

 

(2) ×。「無権代理と本人の不確答と追認の可否」

確かに、無権代理行為の全てが本人に不利益とは限らないことから、相手方に催告権を認めた。

そこで↓

本人が、相当期間内に確答がないときの効果が問題となるが、元々本人は、何もしていないことから、その期間内に確答がないときは、追認拒絶したとみなすとした。

従って↓

「Bが期間内に確答をしない場合には,追認とみなされ本件売買契約は有効となる」とするのは・・×。

*相手方は,無権代理について善意・悪意関係なく、本人に対して,相当な期間を定め追認するか否かを催告ができる。

 

(3) ×。「無権代理人が本人を共同相続した場合の追認拒絶の可否」

確かに、無権代理の場合、無権代理人は相手方に対し「履行又は損害賠償」責任を負う。一方、本人は「追認権又は追認拒絶権」を有するので、無権代理人が本人を相続すれば、「追認拒絶権」も相続することとなるが、判例は、単独相続の場合には信義則上、「追認拒絶」はできないとする。

そこで↓

共同相続した場合も同様に解すべきか問題となる。

この点↓

判例は、他の共同相続人は何も当該無権代理行為に加担していない以上、「追認拒絶権」を行使することは信義則上許されるとする。また、共同相続人間で「追認拒絶」と「追認」とが混在することは法律関係が複雑になることから、他の共同相続人が「追認拒絶権」をしている場合は、無権代理人にも「追認拒絶」を認めることとした。

従って↓

「Dが追認を拒絶していても,Aの相続分に相当する部分についての売買契約は,相続開始と同時に有効となる」とするのは・・×。

原則

無権代理人が本人を単独相続した場合→無権代理人は、信義則上「追認拒絶」はできない。

例外

無権代理人が本人を共同相続した場合→他の共同相続人が「追認拒絶」をしている場合、無権代理人も「追認拒絶」ができる。

 

(4) ○。「本人が無権代理人を相続した場合」

確かに、本人が無権代理人を相続した場合、本人は相手方に対し無権代理人の「履行又は損害賠償」責任を負うこととなる。

そこで↓

本人が、「追認拒絶」できるか問題となる。

この点↓

判例は、本人は元々当該無権代理行為については、帰責性はないことから「追認拒絶権」を行使することは信義則上許されるとする。

しかし↓

「追認拒絶権」を行使した場合、無権代理人の「損害賠償」責任を負うこととなる。

従って↓

「Bは追認を拒絶できるが,CがAの無権代理につき善意無過失であれば,CはBに対して損害賠償を請求することができる」ので・・○。

 

H18年〔問2〕・・・「代理の各種関係」・・正解率約40%

 AはBの代理人として、B所有の甲土地をCに売り渡す売買契約をCと締結した。しかし、Aは甲土地を売り渡す代理権は有していなかった。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 BがCに対し、Aは甲土地の売却に関する代理人であると表示していた場合、Aに甲土地を売り渡す具体的な代理権はないことを過失により知らなかったときは、BC間の本件売買契約は有効となる。

2 BがAに対し、甲土地に抵当権を設定する代理権を与えているが、Aの売買契約締結行為は権限外の行為となる場合、甲土地を売り渡す具体的な代理権がAにあるとCが信ずべき正当な理由があるときは、BC間の本件売買契約は有効となる。

3 Bが本件売買契約を追認しない間は、Cはこの契約を取り消すことができる。ただし、Cが契約の時において、Aに甲土地を売り渡す具体的な代理権がないことを知っていた場合は取り消せない。

4 Bが本件売買契約を追認しない場合、Aは、Cの選択に従い、Cに対して契約履行又は損害賠償の責任を負う。ただし、Cが契約の時において、Aに甲土地を売り渡す具体的な代理権はないことを知っていた場合は責任を問われない。

本問は、無権代理・表権代理・追認等の代理の各種関係の正確な理解を問う問題で、各制度の体系的整理をしていない手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

 

「解 説」・・・・正解(1)

(1)×。「表見代理の成立要件」

確かに、本人が実質的に第三者に代理権を授与していない以上は「無権代理行為」であり本人に効果帰属しないのが原則であるが、本人が第三者に代理権を与えたような表示をした場合でも一切責任を負わないのは、代理制度の信頼を害し妥当ではない。

そこで↓

相手方が「善意・無過失」で代理権の存在を信じた場合には、相手方保護のために「表見代理」が成立するが、過失により知らなかった場合には否定され、無権代理人と相手方の締結した契約の効力は、本人に効果帰属しないこととなる。

従って↓

「(無権代理人)Aに甲土地を売り渡す具体的な代理権はないことを(相手方)Cが過失により知らなかったときは,(本人)B・C間の本件売買契約は有効となる」とするのは・・×。

 *表見代理の5類型

 

・条文に基づくもの

代理権授与の表示による表見代理 (109)

権限外の行為の表見代理 (110)

代理権消滅後の表見代理 (112)

・判例によるもの(重畳適用(チョウジョウテキヨウ))

(109条)+(110条)

(110条)+(112条)

 

(2)○。「基本代理権と表見代理の成否」

確かに、本人と無関係に成された「無権代理行為」は、本人に効果帰属しないのが原則であるが、本人が代理権の存在を推認させるような印鑑証明書などの重要書類を不用意に預けており、かつ、相手方が「善意・無過失」で代理権の存在を信じた場合には、相手方保護のために「表見代理」が成立するとした。

そこで↓

抵当権を設定する代理権しかなかったとしても「表見代理」が成立し、無権代理人と相手方の締結した契約の効力は、本人に効果帰属することとなる。

従って↓

「BC間の本件売買契約は有効となる」ので・・○。

 

(3)○。「無権代理と悪意の相手方の取消主張の可否」

確かに、「無権代理」の場合、相手方保護の観点より、相手方が、無権代理であることを知らない(善意・無過失)で、かつ、本人の追認があるまでの間は、当該売買契約を取り消すことができるとした。

しかし↓

相手方が契約の時に代理権の不存在を知っていた(悪意)場合には、不測の損害はなく保護に値しないので取り消すことはできない。

従って↓

「Cが契約の時において,Aに甲土地を売り渡す具体的な代理権がないことを知っていた場合は取り消せない」ので・・○。

 

(4)○。「無権代理人に対する履行請求・損害賠償請求の可否」

確かに、本人にとって「無権代理行為」の全てが不利益とは限らないので、本人に「追認権」を認め、「追認」したときは、当該無権代理行為は初めから有効となり、本人に効果帰属することとした。

しかし↓

「追認」するか否かは、本人の自由であり「追認拒絶」をすれば当該無権代理の責任を本人は一切負わないこととなる。

そこで↓

相手方が「善意・無過失」で、かつ、本人の「追認」がないときは、相手方は選択により無権代理人に対し「契約の履行の請求」又は「損害賠償の請求」をすることができる。

従って↓

(相手方)Cが、「(無権代理人)Aに甲土地を売り渡す具体的な代理権はないことを知っていた場合は責任を負わない」ので・・○。

 

H16年〔問5〕・・・「土地の取得時効」・・正解率約58%

 A所有の土地の占有者がAからB,BからCと移った場合のCの取得時効に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。

1 Bが平穏・公然・善意・無過失に所有の意思をもって8年間占有し,CがBから土地の譲渡を受けて2年間占有した場合,当該土地の真の所有者はBではなかったとCが知っていたとしても,Cは10年の取得時効を主張できる。

2 Bが所有の意思をもって5年間占有し,CがBから土地の譲渡を受けて平穏・公然に5年間占有した場合,Cが占有の開始時に善意・無過失であれば,Bの占有に瑕疵があるかどうかにかかわらず,Cは10年の取得時効を主張できる。

3 Aから土地を借りていたBが死亡し,借地であることを知らない相続人Cがその土地を相続により取得したと考えて利用していたとしても,CはBの借地人の地位を相続するだけなので,土地の所有権を時効で取得することはない。

4 Cが期間を定めずBから土地を借りて利用していた場合,Cの占有が20年を超えれば,Cは20年の取得時効を主張することができる。

本問は、土地の取得時効を正確に理解しているか否かの複合問題・・・・パスするのはもったいない問題。

「解 説」・・・・正解(1)

(1)○。「取得時効と前主の善意・無過失と地位の承継の可否」

確かに、所有権の取得時効成立要件は「所有の意思」をもって、「占有開始時」を基準に善意・無過失の場合10年,それ以外は20年である。この占有は事実状態を意味するので、①自己の占有期間のみの主張、又は②前主の占有期間の承継の主張も可能であるが、この場合、善意・悪意をも承継することとなる。

              そこで↓

(前主)Bが平穏・公然・善意・無過失に所有の意思をもって8年間占有し,Cが当該土地の真の所有者はBではなかったとを知りBから土地の譲渡を受けて2年間占有した場合,10年の取得時効を主張できることとなる。

              従って↓

「Cは10年の取得時効を主張できる」ので・・○。

 

(2)×。「取得時効と前主の地位の承継の可否」

確かに、所有権の取得時効成立要件は「所有の意思」をもって、「占有開始時」を基準に善意・無過失の場合10年,それ以外は20年である。この場合、善意・悪意をも承継することとなる。

              そこで↓

Bが所有の意思をもって5年間占有し,CがBから土地の譲渡を受けて平穏・公然に5年間占有した場合,Cが占有の開始時に善意・無過失であれば,Bの占有に瑕疵(悪意)がある場合には,Cは20年で取得時効を主張できることとなる。

             従って↓

「Cは10年の取得時効を主張できる」とするのは・・×。

 

(3)×。「相続と取得時効の可否」

確かに、所有権の取得時効成立要件は「所有の意思」をもって、「占有開始時」を基準に善意・無過失の場合10年,それ以外は20年である。

               そこで↓

Aから土地を借りていたBは「所有の意思」がないと考えられるが、Bの相続人Cは借地と知らずにその土地を相続取得したものと考え利用していたのであり「所有の意思」があると考えられ、相続も新権原に当たることからCが土地の所有権を時効で取得する可能性はある。

               従って↓

「CはBの借地人の地位を相続するだけなので,土地の所有権を時効で取得することはない」とするのは・・×。

 

(4)×。「取得時効の成立要件」

確かに、所有権の取得時効成立要件は「所有の意思」をもって、「占有開始時」を基準に善意・無過失の場合10年,それ以外は20年である。

               そこで↓

Cが期間を定めずBから土地を借りて利用していた場合には,通常「所有の意思」がない占有と考えられるので、Cは20年の取得時効を主張することはできない。

               従って↓

「Cは20年の取得時効を主張することができる」とするのは・・×。

 

H17年〔問4〕・・・「消滅時効」・・正解率約58%

 Aが有する権利の消滅時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 Aが有する所有権は、取得のときから20年間行使しなかった場合、時効により消滅する。

2 AのBに対する債権を被担保債権として、AがB所有の土地に抵当権を有している場合、被担保債権が時効により消滅するか否かにかかわらず、設定時から10年が経過すれば、抵当権はBに対しては時効により消滅する。

3 AのCに対する債権が、CのAに対する債権と相殺できる状態であったにもかかわらず、Aが相殺することなく放置していたためにAのCに対する債権が時効により消滅した場合、Aは相殺することはできない。

4 AのDに対する債権について、Dが消滅時効の完成後にAに対して債務を承認した場合には、Dが時効完成の事実を知らなかったとしても、Dは完成した消滅時効を援用することはできない。

本問は、消滅時効を正確に理解しているか否かの複合問題・・・・パスするのはもったいない問題。

「解 説」・・・・正解(4)

(1)×。「所有権の消滅時効の成否」

確かに、時効制度は、①永続した事実状態の尊重、②立証の困難性の救済、③権利の上に眠る者は保護しないとする趣旨に基づくものである。この時効には「消滅時効」と「取得時効」の2種類があり、不動産を無権原の第三者が所有の意思をもって一定期間占有を継続した場合、取得時効により当該第三者はその不動産の所有権を取得時効することができる。

そこで↓

第三者はその不動産の所有権を取得時効した場合、真の所有者は当該不動産の所有権を消滅時効により失ったように思え問題となる。

この点↓

所有権は絶対の原則に基づき消滅時効にかからないが、取得時効の完成の反射的効果として元の所有者はその所有権権利が行使できなくなるにすぎない。

従って↓

「時効により消滅する」とするのは・・×。

 

(2)×。「抵当権の被担保債権から独立の時効消滅の可否」

確かに、抵当権は被担保債権を担保のための物権であり、被担保債権の時効消滅とは無関係に抵当権が独立して時効消滅するのか問題となる。

この点↓

民法は、抵当権が被担保債権を担保のためのものであることから、債務者や抵当権設定者に対しては,被担保債権と同時でなければ時効消滅することはないとした。

従って↓

「被担保債権が時効により消滅するか否かにかかわらず、設定時から10年が経過すれば、抵当権はBに対しては時効により消滅する」とするのは・・×。

*第三取得者や後順位抵当権者との関係では,被担保債権の消滅時効とは別個に抵当権だけが20年の消滅時効にかかる(判例)

 

(3)×。「相殺適状債権と時効消滅の成否」

確かに、権利の上に眠る者は保護しないとする時効制度の趣旨からすれば、債権が相殺適状にあったにもかかわらず、これを相殺することなく放置していた場合、当該債権は、時効消滅すると思え問題となる。

この点↓

民法は、時効完成前に相殺適状になっていれば、相殺したものと考えるのが通常であることからで消滅時効にかかった債権でも自働債権として相殺することができるとした。

従って↓

「Aが相殺することなく放置していたためにAのCに対する債権が時効により消滅した場合、Aは相殺することはできない」とするのは・・×。

*すでに消滅時効になった債権を譲受人が,これを自働債権として相殺しようとしても,消滅時効が援用されれば相殺は効力を生じない(判例)

 

(4)○。「消滅時効完成後の債務承認と援用の可否」

確かに、判例は、時効制度は、永続した事実状態を尊重するものであるが、利益の強要は好ましくないので援用によって確定的に効果が生じるとした(不確定効果説)。

そこで↓

時効完成の事実を知らずに、消滅時効完成後に債務承認を場合、消滅時効を援用できないのか、すなわち、時効利益の放棄も意思表示であることから知らなかった場合には放棄にあたらないと思え問題となる。

この点↓

判例は、知らなかった場合には時効利益の放棄とはならないが、消滅時効の完成後に,時効完成の事実を知らずに債務を承認した場合は、信義則によりその後消滅時効の援用をすることはできないとした。

従って↓

「Dが時効完成の事実を知らなかったとしても、Dは完成した消滅時効を援用することはできない」ので・・○。

 

H16年〔問3〕・・・「各種の物権変動」・・正解率約47%

 Aは,自己所有の建物をBに売却したが,Bはまだ所有権移転登記を行っていない。この場合,民法の規定及び判例によれば,次の記述のうち誤っているものはどれか。

1 Cが何らの権原なくこの建物を不法占有している場合,Bは,Cに対し,この建物の所有権を対抗でき,明渡しを請求できる。

2 DがAからこの建物を賃借し,引渡しを受けて適法に占有している場合,Bは,Dに対し,この建物の所有権を対抗でき,賃貸人たる地位を主張できる。

3 この建物がAとEとの持分1/2ずつの共有であり,Aが自己の持分をBに売却した場合,Bは,Eに対し,この建物の持分の取得を対抗できない。

4 Aはこの建物をFから買い受け,FからAに対する所有権移転登記がまだ行われていない場合,Bは,Fに対し,この建物の所有権を対抗できる。

本問は、各種の物権変動を正確に理解しているか否かの複合問題。177条の「第三者」の範囲の具体例・判例の知識が必要・・・・パスするのはもったいない問題。

「解 説」・・・・正解(2)

(1)○。 「不法占有者と177条の第三者か」

確かに、民法177条は、不動産物権変動の第三者対抗力は「登記」が必要であると規定するので、何らの権原なくこの建物を不法占有者が第三者に当たるか、すなわち、第三者の範囲が問題となる。

この点↓

判例は、177条の第三者とは「当事者又は包括承継人以外の者で、登記の欠缺(ケンケツ)を主張する正当の利益を有する者」とする。

そこで↓

何らの権原なくこの建物を不法占有者Cは、「登記の欠缺(ケンケツ)を主張する正当利益を有する者」に該当しない。

従って↓

「Bは,Cに対し,この建物の所有権を対抗でき,明渡しを請求できる」ので・・○。

第三者とは

当事者又は包括承継人以外の者で、登記の欠缺(ケンケツ)を主張する正当の利益を有する者

第三者に該当しない者

①不法行為者・不法占有者、②一般債権者、③転々譲渡の後主からみた前主、④背信的悪意者、⑤通行地役権の承役地の譲受人等、

 

(2) ×。「賃貸建物の未登記新所有者の適法な賃借人への対抗の可否」

確かに、賃借建物の売買は、原則として賃借人の同意なくして自由にできる。

そこで↓

適法な賃借人に対して未登記の新所有者は、登記なくして当該建物の所有権を賃借人に対抗できるか、すなわち、賃貸人たる地位を主張できるか問題となる。

この点↓

判例は、厳格に考えれば新所有者と賃借人とは物権を相争う対抗関係にないが、賃借人の賃料の二重払いの防止の観点より、新所有者は、登記なくして当該建物の所有権を賃借人に対抗できないとする。

従って↓

「(新所有者)Bは,(賃借人)Dに対し,この建物の所有権を対抗でき,賃貸人たる地位を主張できる」とするのは・・×。

*賃借人が適法に賃借していることが前提である。

 

(3) ○。「持分譲受人と他の共有者との対抗関係の成否」

確かに、共有は1っの所有権を復数人で持分割合に応じて所有する形態であり、当該持分も所有権である以上、原則自由に処分できる。

そこで↓

共有者に1人が当該持分を譲渡した場合、譲受人は登記なくして当該持分を他の共有者に対抗できるか問題となる。

この点↓

判例は、厳格に考えれば持分譲受人と他の共有者とは物権を相争う対抗関係にないが、他の共有者保護の観点より、他の共有者は,「持分の譲受人に登記がないことを主張するについて正当の利益を有する第三者」に該当し,譲受人Bは、他の共有者Eに対して,登記がなければ対抗できないとする。

従って↓

「Bは,Eに対し,この建物の持分の取得を対抗できない」のは・・○。

 

(4) ○。「前々主と対抗関係の成否」

確かに、建物がF→A→Bと売買された場合、形式的に見ればB・F間は第三者の関係が成立し、対抗関係が生じるとも思え問題となる。

この点↓

判例は、FはAの前の所有者(前主)としてBとは対抗関係はなく,当事者に準じる立場となるので、Fは,「Bに登記がないことを主張するについて正当の利益を有する第三者」には該当しないとする。

従って↓

「Bは,Fに対し,この建物の所有権を対抗できる」ので・・○。

*FA(売主)―→A(買主・売主)―→B(買主)

(二重譲渡の場合) F(買主)←―A(売主)―→B(買主) 

 

H16年〔問9〕・・・「解除と第三者との関係」・・正解率約50%

 AはBに甲建物を売却し,AからBに対する所有権移転登記がなされた。AB間の売買契約の解除と第三者との関係に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。

1 BがBの債権者Cとの間で甲建物につき抵当権設定契約を締結し,その設定登記をした後,AがAB間の売買契約を適法に解除した場合,Aはその抵当権の消滅をCに主張できない。

2 Bが甲建物をDに賃貸し引渡しも終えた後,AがAB間の売買契約を適法に解除した場合,Aはこの賃借権の消滅をDに主張できる。

3 BがBの債権者Eとの間で甲建物につき抵当権設定契約を締結したが,その設定登記をする前に,AがAB間の売買契約を適法に解除し,その旨をEに通知した場合,BE間の抵当権設定契約は無効となり,Eの抵当権は消滅する。

4 AがAB間の売買契約を適法に解除したが,AからBに対する甲建物の所有権移転登記を抹消する前に,Bが甲建物をFに賃貸し引渡しも終えた場合,Aは,適法な解除後に設定されたこの賃借権の消滅をFに主張できる。

本問は、解除と第三者との関係(抵当権・賃貸借)を正確に理解しているか否かの複合問題。特に「賃貸借」の手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

「解 説」・・・・正解(1)

(1)○。「解除権者と解除前の登記を有する第三者との優劣」

        「解除前の抵当権者C」

(売主) (①売買)              B(買主)

           ―(③解除)  (抵当権設定者)

                      ↓(②抵当権設定)

(抵当権者・登記)

確かに、解除には遡及効があるので、当該契約は初めからなかったこととなるのが原則であるが、第三者の権利を害することはできないとするので、本件の抵当権者Cが「第三者」に該当し保護されるのか問題となる。

この点↓

判例は、第三者の権利を害することはできないとしたのは、解除の遡及効を制限することで第三者の保護を図ったものであり、解除前の第三者は権利保護要件としての「登記」が必要とする。

そこで↓

債権者Cが甲建物につき抵当権設定契約を締結し,その設定登記後に,AがAB間の売買契約を適法に解除したもので、抵当権者Cは「第三者」に該当し、権利保護要件としての「登記」も有するので、(売主)Aはその抵当権の消滅を(抵当権者)Cに主張できない。

従って↓

「(売主)Aはその抵当権の消滅を(抵当権者)Cに主張できない」ので・・○。

 

(2)×。「解除権者と解除前の引渡しを受けた賃借人との優劣」

        「解除前の甲建物賃貸人D」

(売主) (①売買)              B(買主)

           ―(③解除)  (甲建物賃貸人)

                      ↓(②賃貸借)

(甲建物賃借人・引渡し)

確かに、解除には遡及効があるので、当該契約は初めからなかったこととなるのが原則であるが、第三者の権利を害することはできないとするので、本件の甲建物の賃借人Dが「第三者」に該当し保護されるのか問題となる。

この点↓

判例は、第三者の権利を害することはできないとしたのは、解除の遡及効を制限することで第三者の保護を図ったものであり、解除前の第三者は権利保護要件としての「引渡し」が必要とする。

そこで↓

(買主)Bが甲建物をDに賃貸し引渡しも終えた後,AがAB間の売買契約を適法に解除したもので、(賃借人)Cは「第三者」に該当し、引渡しを受けているので、(売主=解除権者)Aはこの賃借権の消滅を(賃借人)Dに主張できない。

従って↓

「(売主=解除権者)Aはこの賃借権の消滅を(賃借人)Dに主張できる」とするのは・・×。

 

(3)×。「解除権者の解除前の未登記第三者に対する無効主張の可否」

確かに、解除には遡及効があるので、当該契約は初めからなかったこととなるのが原則であるが、第三者の権利を害することはできないとするので、本件の抵当権者Cが「第三者」に該当し保護されるのか問題となる。

この点↓

判例は、第三者の権利を害することはできないとしたのは、解除の遡及効を制限することで第三者の保護を図ったものであり、解除前の第三者は権利保護要件としての「登記」が必要とする。

そこで↓

BがBの債権者Eとの間で甲建物につき抵当権設定契約を締結したが,その設定登記をする前に,AがAB間の売買契約を適法に解除したにであり、抵当権者Cは「第三者」に該当し、権利保護要件としての「登記」を有していなのので、(売主)Aはその抵当権の消滅を(抵当権者)Cに主張できることとなるが、この場合、BC間のを抵当権設定契約が無効になるわけではない。

従って↓

「BE間の抵当権設定契約は無効となり」とするのは・・×。

 

(4)×。「解除権者と解除後の第三者との優劣」

        「解除後の賃借人F」

(売主) (①売買)              B(買主)

           ―(②解除)  (甲建物貸主)

                      ↓(③賃貸借契約)

(甲建物借主・引渡)

確かに、判例は、解除の遡及効を制限することで保護される「第三者」とは、解除前の「第三者」であるとするので、AがAB間の甲建物売買契約を適法に解除したが,所有権移転登記を抹消する前に,BがFに賃貸し引渡しも終えた場合,Aは、賃借権の消滅をFに主張できるか問題となる。

この点↓

判例は、解除の遡及効によりBからAへの甲建物の返還も1種の物権変動として、解除権者Aと賃借人Fとの間には対抗関係が生じ、177条の登記の先後で優劣を決するとする。

そこで↓

AからBに対する甲建物の所有権移転登記を抹消する前に,Bが甲建物をFに賃貸し「引渡し」を終えたのであり、賃借人Fが優先するので、Aは,賃借権の消滅をFに主張できない。

従って↓

「(解除権者)Aは,適法な解除後に設定されたこの賃借権の消滅を(賃借人)Fに主張できる」とするのは・・×。

 

H18年〔問3〕・・・「停止条件付契約」・・正解率約57%

 Aは、Bとの間で、A所有の山林の売却について買主のあっせんを依頼し、その売買契約が締結され履行に至ったとき、売買代金の2%の報酬を支払う旨の停止条件付きの報酬契約を締結した。この契約において他に特段の合意はない。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 あっせん期間が長期間に及んだことを理由として、Bが報酬の一部前払を要求してきても、Aには報酬を支払う義務はない。

2 Bがあっせんした買主Cとの間でAが当該山林の売買契約を締結しても、売買代金が支払われる前にAが第三者Dとの間で当該山林の売買契約を締結して履行してしまえば、Bの報酬請求権は効力を生ずることはない。

3 停止条件付きの報酬契約締結の時点で、既にAが第三者Eとの間で当該山林の売買契約を締結して履行も完了していた場合には、Bの報酬請求権が効力を生ずることはない。

4 当該山林の売買契約が締結されていない時点であっても、Bは停止条件付きの報酬請求権を第三者Fに譲渡することができる。

本問は、停止条件付契約の応用的な細部の理解を問う問題。今後は・・・・パスするのはもったいない問題。

「解 説」・・・・正解(2)

(1)○。「停止条件付法律行為の効力発生時期」

確かに、停止条件付契約では、その停止条件が成就したときから,その効力が生じる。あっせん期間が長期間に及んだことを理由として、条件が成就前に報酬の一部前払を要求できるか問題となる。

この点↓

売買契約が締結され履行に至っていない以上、停止条件が成就したとはいえないので、報酬を支払う義務はないこととなる。 

従って↓

「Aには報酬を支払う義務はない」ので・・○。

 

(2)×。「条件成就の妨害と条件の効力」

確かに、民法は、公平の観点より条件が成就することで不利益を受ける当事者が条件の成就を故意に妨害したときは,その条件は成就したものとみなすこととした。

そこで↓

Bがあっせんした買主Cとの間でAが当該山林の売買契約を締結したが、Aが第三者Dとの間で当該山林の売買契約を締結して履行してしまった場合、条件の成就を故意に妨害したに該当するのか問題となる。

この点↓

判例は、AとCが仮契約,AとDが本契約をした場合、妨害にあたるとしたので、本件も同様となり、Bの報酬請求権は効力を生ずる。
          従って↓

「Bの報酬請求権は効力を生ずることはない」とするのは・・×。

 

(3)○。「既成条件の効力」

確かに、停止条件付契約では、その停止条件が成就したときから,その効力が生じるが、停止条件付きの報酬契約締結の時点で、既にAが第三者Eとの間で当該山林の売買契約を締結して履行も完了していた場合、当該停止条件付契約の効力が問題となる。

この点↓

民法は、条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無効とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無条件とした。

従って↓

「既にAが第三者Eとの間で当該山林の売買契約を締結して履行も完了していた場合には、Bの報酬請求権が効力を生ずることはない」ので・・○。

 

(4)○。「条件の成否未定の間の効力」

確かに、停止条件付契約では、その停止条件が成就したときから,その効力が生じる。

しかし↓

条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができるとした。

そこで↓

条件が成否未定の間は,当事者の権利義務(ここでは報酬請求権)は処分すること
 ができることとなる。

従って↓

「Bは停止条件付きの報酬請求権を第三者Fに譲渡することができる」ので・・○。

 

H19年〔問7〕・・・「担保物権」・・正解率約58%

 担保物権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 建物の建築工事の費用について、当該工事の施工を行った者が先取特権を行使するためには、あらかじめ、債務者である建築主との間で、先取特権の行使について合意しておく必要がある。

2 建物の賃借人が賃貸人に対して造作買取代金債権を有している場合には、造作買取代金債権は建物に関して生じた債権であるので、賃借人はその債権の弁済を受けるまで、建物を留置することができる。

3 質権は、占有の継続が第二者に対する対抗要件と定められているため、動産を目的として質権を設定することはできるが、登記を対抗要件とする不動産を目的として質権を設定することはできない。

4 借地人が所有するガソリンスタンド用店舗建物に抵当権を設定した場合、当該建物の従物である地下のタンクや洗車機が抵当権設定当時に存在していれば、抵当権の効力はこれらの従物に及ぶ。

本問は、担保物権である留置権・質権等の複合問題。各制度の整理の手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

 

H15年〔問5〕・・・「抵当権に基づく物上代位の可否」・・正解率約35%

 Aは,B所有の建物に抵当権を設定し,その旨の登記をした。Bは,その抵当権設定登記後に,この建物をCに賃貸した。Cは,この契約時に,賃料の6ヵ月分相当額の300万円の敷金を預託した。この場合,民法の規定及び判例によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。

1 Bが,BのCに対する将来にわたる賃料債権を第三者に譲渡し,対抗要件を備えた後は,Cが当該第三者に弁済する前であっても,Aは,物上代位権を行使して当該賃料債権を差し押さえることはできない。

2 Bの一般債権者であるDが,BのCに対する賃料債権を差し押さえ,その命令がCに送達された後は,Cが弁済する前であっても,Aは,物上代位権を行使して当該賃料債権を差し押さえることはできない。

3 Aが物上代位権を行使して,BのCに対する賃料債権を差し押さえた後は,Cは,Aの抵当権設定登記前からBに対して有している弁済期の到来している貸付金債権と当該賃料債権とを相殺することはできない。

4 Aが物上代位権を行使して,BのCに対する賃料債権を差し押さえた後,賃貸借契約が終了し建物を明け渡した場合,Aは,当該賃料債権について敷金が充当される限度において物上代位権を行使することはできない。

本問は、抵当権に基づく物上代位の概念を正確に理解しているか否かの問題。

 

「解 説」・・・・正解(4)

(1)×。「抵当権者の抵当債権譲渡後の債権差押の可否」

 

(抵当権者)A     ―    B(抵当権設定者)       
       ①抵当権設定   | ② 賃貸借・・・・③債権譲渡(賃料債権)
                   C (賃借人)

③賃料債権の譲渡    ④物上代位権を行使できるか?

     ―――●―――――――――●―――→ 

確かに、抵当権は交換価値を把握する非占有担保物権であり、設定者Bが抵当目的建物を第三者Cに賃貸することは許される。また、物上代位権とは、抵当目的物が消滅した時、その代位物にも効力が及ぶとするものであるが、BのCに対する賃料債権を第三者に譲渡している。

そこで↓

民法は、抵当権設定後に成された賃貸借に基づく賃料債権は、抵当権を実行する前でも,抵当権設定者のもつ賃料債権を抵当権に基づいて,差し押さえることができるとするが、何時物上代位権を行使すべき時期が問題となる。

この点↓

判例は、第三債務者の二重弁済の危険防止の観点より、抵当権者が物上代位権を行使するには、第三債務者が弁済する前に,差押をしなければならないとする。

従って↓

抵当権者Aは、賃借人Cが、譲受人(第三者)に支払う前であれば当該賃料債権を差押えることができる。

よって↓

「Cが当該第三者に弁済する前であっても,Aは,物上代位権を行使して当該賃料債権を差し押さえることはできない」とするのは・・×。

 

(2)×。「一般債権者の差押えと抵当権者の物上代位権による差押えの優劣」

確かに、判例は、抵当権者が物上代位権を行使するには、第三債務者の二重弁済の危険防止の観点より、第三債務者が弁済する前に,差押をしなければならないとする。

  そこで↓

一般債権者の差押えた後は、抵当権者は物上代位権を行使できないのか、つまり、しの優劣が問題となる。

この点↓

判例は、 一般債権者の差押えと抵当権者の差押えが競合した場合は,「一般債権者の申立てによる差押え命令の第三債務者への送達」と「抵当権設定登記」の先後で優劣を決するとする。

従って↓

抵当権者Aの登記は、一般債権者の申立てによる差押え命令の第三債務者への送達よりも先であることから、優先するので物上代位権を行使して当該賃料債権を差し押さえることができる。

よって↓

「Cが弁済する前であっても,Aは,物上代位権を行使して当該賃料債権を差し押さえることはできない」とするのは・・×。

 

(3)×。「抵当権設定登記前債権と差押えの後の相殺」

確かに、相殺は、手続の簡便性のために認められた債権の消滅事由である。

そこで↓

物上代位権による差押後、抵当権設定前に賃借人が賃貸人に対する債権をもって相殺できるか問題となる。

この点↓

判例は、賃借人は,抵当権設定登記後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権として相殺することはできないが、抵当権設定登記前に賃貸人に対して取得した債権を自働債権として相殺することはできるとする。

従って↓

「Cは,Aの抵当権設定登記前からBに対して有している弁済期の到来している貸付金債権と当該賃料債権とを相殺することはできない」とするのは・・×。

*第三債務者が差押え又は仮差押えによって支払いの差し止めを受けた場合、その後に取得した債権を自働債権として相殺しても、差押え債権者に対抗することはできない。(民法511)

 そこで、反対解釈として, 第三債務者が債権の差押え前に取得されたものである
限り,受働債権の弁済期が到来し相殺適状になれば,差押後でも相殺をすることができる。

 

(4)○。「敷金全額返還請求権と賃料債権への物上代位権の行使の可否」

確かに、敷金は賃貸借契約関係から生じた賃借人の債務を担保するものであることから、その敷金返還請求権は建物明け渡しが先履行となるが、抵当権者Aが、に対する賃料債権を差し押さえた後、敷金全額に物上代位権を行使できるか問題となる。

この点↓

判例は、賃借人の敷金返還請求権は,建物の明渡し時に,未払い分の賃料などを控除して,なお残額がある場合に,賃借人が賃貸人その残額について返還請求できるとする。

従って↓

「(抵当権者)Aは,当該賃料債権について敷金が充当される限度において物上代位権を行使することはできない」ので・・○。

 

H17年〔問5〕・・・「抵当権の物上代位」・・正解率約50%

 物上代位に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

 なお、物上代位を行う担保権者は、物上代位の対象となる目的物について、その払渡し又は引渡しの前に他の債権者よりも先に差し押さえるものとする。

1 不動産の売買により生じた債権を有する者は先取特権を有し、当該不動産が賃借されている場合には、賃料に物上代位することができる。

2 抵当権者は、抵当権を設定している不動産が賃借されている場合には、賃料に物上代位することができる。 

3 抵当権者は、抵当権を設定している建物が火災により焼失した場合、当該建物に火災保険が付されていれば、火災保険金に物上代位することができる。

4 不動産に留置権を有する者は、目的物が金銭債権に転じた場合には、当該金銭に物上代位することができる。

本問は、抵当権に基づく物上代位の概念を正確に理解しているか否かの問題・・・・パスするのはもったいない問題。

「解 説」・・・・正解(4)

(1)○。「先取特権に基づく賃料に対する物上代位の可否」

確かに、先取特権は、社会政策的観点や公平の確保のために、特殊な債権を有する者が、債務者の一般財産や特定財産から他の債権者に優先して弁済を受けることができる目的物の価値支配の法定担保物権である。

そこで↓

不動産の売買により生じた債権を有する先取特権者は、当該不動産が賃借されている場合その賃料に物上代位することができるか問題となる。

この点↓

民法は、不動産の保存・工事・売買によって生じた債権については、公平の観点より、売買契約と同時に登記をすることで先取特権を認め、当該不動産が賃貸された場合、賃料請求権に物上代位ができるとする。

従って↓

「賃料に物上代位することができる」ので・・○。

一般先取特権

動産先取特権

不動産先取特権

債務者の総財産を担保目的とする。

債務者の特定の動産を担保目的とする。

債務者の特定の不動産を担保目的とする。

共益費用・葬式費用・日用品供給

不動産賃貸・動産売買

不動産の保存・工事・売買→登記が必要。

 

(2)○。「抵当権と賃料の物上代位の可否」

確かに、抵当権は被担保債権の交換価値を支配する非占有担保物権である。

そこで↓

設定者が使用・収益ができる非占有担保物権において、債務不履行後の抵当目的不動産の収益権に抵当権の効力が及ぶか問題となる。

この点↓

判例は、抵当権が交換価値を支配するものであることから、賃料の支払を求める権利に対して物上代位権を認めた。

従って↓

「賃料に物上代位することができる」ので・・○。

*物上代位性とは,目的物の売却・賃貸・滅失・損傷により債務者が受ける金銭等の請求権に対して,担保権者が権利を行使できるもので、先取特権(一般の先取特権を除く),抵当権,質権に認められ、留置権には物上代位性はない。

 

(3)○。「火災保険請求権に対する物上代位の可否」

確かに、物上代位権は、当該担保目的物が売買代金等の代替物に変じた場合に公平の観点より効力が及ぶとするものである。

そこで↓

厳密にみれば、建物火災保険金請求権は保険金の対価であり、建物の代替物ではないので、抵当権者は、火災保険金に物上代位することができるか問題となる。

この点↓

判例は、火災保険金は、大略的にみれば『目的物の滅失・損傷によって債務者が受けるべき金銭』に該当し,抵当権者は,その保険金請求権について抵当権者は物上代位できるとした。

従って↓

「火災保険金に物上代位することができる」ので・・○。

 

(4)×。「留置権の物上代位の可否」

確かに、留置権は、留置権者がその目的物を留置することで間接的に履行を強制するものである。

そこで↓

不動産に留置権を有する者は、目的物が金銭債権に転じた場合には、当該金銭に物上代位することができるか問題となる。

この点↓

民法は、留置権が目的物を返還しないで債務の弁済を促すものであることから、物上代位を認めていない。

従って↓

「当該金銭に物上代位することができる」とするのは・・×。

 

H17年〔問6〕・・・「抵当権と賃貸」・・正解率約25%

 BはAに対して自己所有の甲建物に平成15年4月1日に抵当権を設定し、Aは同日付でその旨の登記をした。Aと甲建物の賃借人との関係に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 Bは、平成15年2月1日に甲建物をCに期間4年の約定で賃貸し、同日付で引き渡していた。Cは、この賃貸借をAに対抗できる。

2 Bは、平成15年12月1日に甲建物をDに期間2年の約定で賃貸し、同日付で引き渡していた。Cは、平成16年4月1日以降もこの賃貸借をAに対抗できる。

3 Bは、平成15年12月1日に甲建物をEに期間4年の約定で賃貸し、同日付で引き渡していた。Eは、平成16年4月1日以降もこの賃貸借をAに対抗できない。

4 Bは、平成16年12月1日に甲建物をFに期間2年の約定で賃貸し、同日付で引き渡していた。Fは、この賃貸借をAに対抗できる。

本問は、抵当権と賃貸の関係を正確に理解しているか否かの問題。賃貸借の手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

「解 説」・・・・正解(4)

(1)○。「抵当権設定前対抗要件を具備した賃貸借に対する抵当権の効力」

15年2月1日  15年4月1日 16年4月1日

 ――――●―――――●――――――――――

      賃借権設定    抵当権設定    改正施行
       期間4年

 

確かに、賃貸借契約は債権であることから、物権である抵当権が優先するのが原則である。

しかし↓

民法は、賃借人保護の観点より抵当権設定前に対抗要件を備えた賃貸借の場合(建物の賃貸借では引渡し又は賃借権の登記)、賃借人は抵当権者に対抗できるとした。

従って↓

「(賃借人)Cは、この賃貸借を(抵当権者)Aに対抗できる」ので・・○。

 

(2)○。「改正施行前の短期賃貸借」

 

 15年4月1日   1512月1日      16年4月1日

 ――――●――――――●――――――――――――

    抵当権設定   短期賃貸借設定    改正施行
               期間2年         (経過措置)

 

確かに、抵当権設定登記後平成16年3月31日までに対抗要件(建物の場合は引渡し又は賃借権の登記)を備えた短期賃貸借(建物では3年以内)の場合,民法改正の経過措置で,当該賃借人は抵当権者に対抗できる。

従って↓

「Cは、平成16年4月1日以降もこの賃貸借をAに対抗できる」ので・・○。

 

(3)○。「期間4年の短期賃貸借」

15年4月1日  1512月1日  16年4月1日

 ――――●――――――●―――――――――――――

   抵当権設定    賃借権設定    改正施行
               期間4年

確かに、平成16年3月31日までに対抗要件を備えた短期賃貸借は民法改正の経過措置で保護されるが、その建物短期賃貸借期間は3年以内であり、4年では短期賃貸借には該当しないので、抵当権者に対抗できない。

従って↓

「Eは、平成16年4月1日以降もこの賃貸借をAに対抗できない」ので・・○。

 

(4)×。「抵当権者全員の同意の登記がない場合」

15年4月1日   16年4月1日  1612月1日

 ――――●――――――――――――●――――――

    抵当権設定     改正施行   賃借権設定
                          期間2年

 

確かに、 抵当権の設定登記後に設定され,抵当権者全員の同意の登記のない賃借権は期間の長短に関係なく抵当権者に対抗できな。

従って↓

「Fは、この賃貸借をAに対抗できる」とするのは・・×。

*本問題は同意の登記はないものとして考えるしかない。

 

H20年〔問4〕・・・「抵当目的物の賃貸」・・正解率約55%

 Aは、Bから借り入れた2,000万円の担保として抵当権が設定されている甲建物を所有しており、抵当権設定の後である平成20年4月1日に、甲建物を賃借人Cに対して賃貸した。Cは甲建物に住んでいるが、賃借権の登記はされていない。この場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。

l1 AがBに対する借入金の返済につき債務不履行となった場合、Bは抵当権の実行を申し立てて、AのCに対する賃料債権に物上代位することも、AC間の建物賃貸借契約を解除することもできる。

2 抵当権が実行されて、Dが甲建物の新たな所有者となった場合であっても、Cは民法第602条に規定されている短期賃貸借期間の限度で、Dに対して甲建物を賃借する権利があると主張することができる。

3 AがEからさらに1,000万円を借り入れる場合、甲建物の担保価値が1,500万円だとすれば、甲建物に抵当権を設定しても、EがBに優先して甲建物から債権全額の回収を図る方法はない。

4 Aが借入金の返済のために甲建物をFに任意に売却してFが新たな所有者となった場合であっても、Cは、FはAC間の賃貸借契約を承継したとして、Fに対して甲建物を賃借する権利があると主張することができる。

本問は、抵当権と賃貸の関係を正確に理解しているか否かの問題。賃貸借の手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

「解 説」・・・・・正解(4)

(1)×。「抵当権者の抵当目的物の賃貸借契約の解除の可否」

確かに、抵当権には物上代位があるので、(債務者=賃貸人)Aの(賃借人)Cに対する賃料債権に物上代位することはできる(372条・304条)。

そこで↓

AC間の建物賃貸借契約を解除することもできるか問題となる。

この点↓

抵当権者は、当該賃貸借契約の当事者でないことから解除はできない。

従って↓

AC間の建物賃貸借契約を解除することもできる」とするのは・・×。

 

(2)×。「「短期賃貸借の効力」

確かに、抵当権は非占有担保物権であることから、設定者は使用・収益ができる。

しかし↓

抵当権設定登記後の賃貸借は、抵当権者又は買受人に対抗できない。

従って↓

Dに対して甲建物を賃借する権利があると主張することができる」とするのは・・×。

*短期賃貸借契約制度の廃止。

(3)×。「抵当権の順位の譲渡の可否」

確かに、抵当権は交換価値を把握する担保物権であり、1番抵当権者Bは2,000万円、2番抵当権者Eは1,000万円の被担保債権を有していたとしても、甲建物の担保価値が1,500万円である場合、その優先順位は登記の先後によることから、原則Eは債権全額の回収はできないこととなる。

そこで↓

2番抵当権者Eが債権全額の回収を図る手段としては、抵当権の順位の譲受けが考えられ、1番抵当権者BからEが抵当権の順位を譲受た場合には債権全額の回収を図ることができる。

従って↓

EBに優先して甲建物から債権全額の回収を図る方法はない」とするのは・・×。       

 

(4)○。「建物の引渡しを受けた賃借人の新所有者への対抗の可否」

確かに、物権は債権に優先するので、原則として「売買は賃貸借を破る」こととなる。

しかし↓

借地借家法31条1項は、建物の賃貸借の第三者対抗力として「引渡し」を認めている。

そこで↓

建物の引渡しを受けた賃借人は、抵当目的建物の賃貸借契約締結後に新たな所有者となった者に対しては、当該賃借権(借家権)を対抗できる。

              従って↓

Fに対して甲建物を賃借する権利があると主張することができる」ので・・○。

 

H18年〔問5〕・・・「抵当権の順位」・・正解率約25%

 Aは、Bから借り入れた2,400万円の担保として第一順位の抵当権が設定されている甲土地を所有している。Aは、さらにCから1,600万円の金銭を借り入れ、その借入金全額の担保として甲土地に第二順位の抵当権を設定した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 抵当権の実行により甲土地が競売され3,000万円の配当がなされる場合、BがCに抵当権の順位を譲渡していたときは、Bに1,400万円、Cに1,600万円が配当され、BがCに抵当権の順位を放棄していたときは、Bに1,800万円、Cに1,200万円が配当される。

2 Aが抵当権によって担保されている2,400万円の借入金全額をBに返済しても、第一順位の抵当権を抹消する前であれば、Cの同意の有無にかかわらず、AはBから新たに2,400万円を借り入れて、第一順位の抵当権を設定することができる。

3 Bの抵当権設定後、Cの抵当権設定前に甲土地上に乙建物が建築され、Cが抵当権を実行した場合には、乙建物について法定地上権が成立する。

4 Bの抵当権設定後、Cの抵当権設定前にAとの間で期間を2年とする甲土地の賃貸借契約を締結した借主Dは、Bの同意の有無にかかわらず、2年間の範囲で、Bに対しても賃借権を対抗することができる。

本問は、抵当権の順位の正確な理解を問う問題で、やや細かいが今後は大枠を押さえること・・・・パスするのはもったいない問題。

「解 説」・・・・正解(1)

(1)○。「抵当権の順位の譲渡・順位の放棄の効果」

 

甲土地に対して、

 ①、第一順位 B 被担保債権 2,400万円

 ②、第二順位  C 被担保債権 1,600万円

 

確かに、抵当権の実行により甲土地の競売代金が3,000万円の場合、本来,Bは2,400万円満額の配当を受け,Cはその残りである600万円の配当を受けとることができるはずである。

そこで↓

BがCに対して抵当権の順位を譲渡の場合、

 ①、 第一順位 C 被担保債権 1,600万円

 ②、第二順位 B 被担保債権 2,400万円

 

Cが1,600万円の配当を受け、残り(1,400万円)をBが配当を受けることになる。

また、BがCに対して抵当権の順位の放棄をすると,

 C 被担保債権 1,600万円 (Bと同じ順位)

 B 被担保債権 2,400万円 (Cと同じ順位)

 

BとCは同順位に扱われ、BCへの配当金の合計金額3,000万円に対して各自の債権額の比率( : C=3 : )に応じて按分された配当がなされる。

 B 3,000万円×3/51,800万円

 C 3,000万円×2/51,200万円

従って↓

「Bに1,400万円、Cに1,600万円が配当され、BがCに抵当権の順位を放棄していたときは、Bに1,800万円、Cに1,200万円が配当される」ので・・○。

 

(2)×。「抵当権の登記の流用の可否」

確かに、抵当権は附従性を有するので、被担保債務が弁済により消滅すれば,抵当権の効力も消滅するので、Aが借入金を返済すれば,Bの抵当権は消滅する。

そこで↓

一番抵当権の消滅前に二番抵当権が存在していた場合、旧一番抵当権が消滅したがその登記の流用が認められるか問題となる。

この点↓

判例は、順位上昇の効力に基づき、二番抵当権が一番抵当権に順位が上がるが、流用された抵当権は、二番抵当権になることもあり得るとした。

従って↓

「AはBから新たに2,400万円を借り入れて、第一順位の抵当権を設定することができる」とするのは・・×。

 

(3)×。「二番抵当権設定前に法定地上権成立要件を満たしている場合」

 

Bの一番抵当権設定  乙建物が建築  Cの二番抵当権設定  競売

 ―――●――――――――――――――●―――――――●――

 

確かに、法定地上権の成立要件は、①抵当権設定時に土地と建物が存在すること、②土地建物が同一人所有であること、③土地と建物に一方又は双方に抵当権設定がされたこと、④競売により土地と建物が別人所有に至ったこと、が必要となる。

そこで↓

一番抵当権設定時には、上記①の要件は満たしていないが、二番抵当権設定時には全ての要件を満たしている場合、法定地上権が成立するのか問題となる。

この点↓

、法定地上権の成立要件を満たすか否かの基準は、一番抵当権者が不利益を受けないようにすることが必要であることから、一番抵当権設定時を基準とすべきである。

従って↓

一番抵当権設定時に更地であった以上、①要件を満たさないので法定地上権は成立しない。

よって↓

「(二番抵当権者)Cが抵当権を実行した場合には、乙建物について法定地上権が成立する」とするのは・・×。

 

(4)×。「抵当権設定登記後の同意なき賃借権の対抗の可否」

確かに、抵当権は設定者が設定後も使用・収益することができる非占有担保物権であることから、設定後も当該抵当目的不動産を第三者に賃貸することも原則として可能である。

そこで↓

抵当権設定登記後の賃借権が、抵当権者に対抗できるか問題となる。

この点↓

民法は、賃借権の付着した抵当目的不動産の交換価値の減少という抵当権者の不利益を回避するために、抵当権者全員の同意の登記のない賃借権は抵当権者に対抗できないとした。

従って↓

「Bの同意の有無にかかわらず、2年間の範囲で、Bに対しても賃借権を対抗することができる」とするのは・・×。

 

H15年〔問6〕・・・「普通抵当権と根抵当権の差異」・・正解率約17%

 普通抵当権と元本確定前の根抵当権に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。

1 普通抵当権でも,根抵当権でも,設定契約を締結するためには,被担保債権を特定することが必要である。

2 普通抵当権でも,根抵当権でも,現在は発生しておらず,将来発生する可能性がある債権を被担保債権とすることができる。

3 普通抵当権でも,根抵当権でも,被担保債権を譲り受けた者は,担保となっている普通抵当権又は根抵当権を被担保債権とともに取得する。

4 普通抵当権でも,根抵当権でも,遅延損害金については,最後の2年分を超えない利息の範囲内で担保される。

本問は、根抵当権の概念を正確に理解しているか否かの問題。根抵当権の本質を理解すればOK・・・・パスするのはもったいない問題。

「解 説」・・・・正解(1)

(1)×。「根抵当権の目的物」

確かに、普通抵当権も根抵当権も債権の担保を目的とするものである。

              そこで↓

普通抵当権の設定契約では,被担保債権を特定することが必要であるが、根抵当権は,一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するものである。

従って↓

「普通抵当権でも,根抵当権でも,設定契約を締結するためには,被担保債権を特定することが必要である」とするのは・・×。

 

(2)○。「根抵当権と将来債権等の可否」

確かに、普通抵当権は、「附従性」を有することから原則として被担保債権を特定することが必要である。

             しかし↓

判例は、附従性を緩和して、将来発生する期限付債権や将来発生する可能性がある条件付債権についても被担保債権とすることができるとする。

従って↓

「普通抵当権でも,根抵当権でも,現在は発生しておらず,将来発生する可能性がある債権を被担保債権とすることができる」ので・・○。

 

(3)×。「根抵当権と元本確定前の随伴性の有無」

確かに、普通抵当権は,被担保債権が譲渡された場合、その普通抵当権も取得できるという「随伴性」が認められる。

しかし↓

根抵当権は,元本確定前に根抵当権者が被担保債権を譲渡しても、随伴性がないので、その根抵当権を取得できない。

従って↓

「根抵当権でも,被担保債権を譲り受けた者は,担保となっている普通抵当権又は根抵当権を被担保債権とともに取得する」とするのは・・×。

 

(4)×。「根抵当権と最後の2年分を超える利息請求の可否」

確かに、普通抵当権は、原則として後順位抵当権者等の保護の観点より、利息・遅延損害金等は最後の2年分に限定される。

しかし↓

根抵当権は,元本が確定したものの他、利息・遅延損害金等を合計して,極度額の範囲内であれば、利害関係者に不測の損害を与えることはないので、最後の2年分に限らず全てが担保される。

従って↓

「根抵当権でも,遅延損害金については,最後の2年分を超えない利息の範囲内で担保される」とするのは・・×。

 

H19年〔問8〕・・・「根抵当権」・・正解率約25%

 Aは、自己所有の甲不動産につき、B信用金庫に対し、極度額を3,000万円、被担保債権の範囲を「信用金庫取引による債権」とする第1順位の根抵当権を設定し、その旨の登記をした。なお、担保すべき元本の確定期日は定めなかった。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 元本の確定前に、被担保債権の範囲を変更するには、後順位の抵当権者がいる場合は、その者の承諾を得なければならない。

2 元本の確定前に、B信用金庫から、被担保債権の範囲に属する個別債権の譲渡を受けた者は、確定日付のある証書でAに対し債権譲渡通知を行っておけば、その債権について根抵当権を行使できる。

3 B信用金庫は、確定した元本が極度額以下であれば、その元本に係る最後の2年分の約定金利については、極度額を超えても、根抵当権を行使できる。

4 Aが友人CのためにB信用金庫との間で保証契約を締結し保証債務を負担した場合、B信用金庫のAに対するこの保証債権は、「信用金庫取引による債権」に含まれ、この根抵当権で担保される。

本問は、根抵当権の手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

 

H20年〔問5〕・・・「詐害行為取消権(424条)」・・正解率約35%

 Aは、Bに対する債権者であるが、Bが債務超過の状態にあるにもかかわらずB所有の甲土地をCに売却し所有権移転登記を経たので、民法第424条に基づく詐害行為取消権 (以下この問において「取消権」という。) の行使を考えている。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

l1 対象となる詐害行為が行われた時点において、AのBに対する債権が、発生済みでかつ履行期が到来している場合でなければ、Aは取消権を行使できない。

2 Cが甲土地の購入時においてこの購入がBの債権者を害すべきことを知らなかったとしても、Bが売却時においてこの売却がBの債権者を害することを意図していた場合は、Aは取消権を行使できる。

3 Bが甲土地の売却においてCから相当の対価を取得しているときは、Aは取消権を行使できない。

4 Aが取消権を行使できる場合でも、AはCに、直接自分に対して甲土地の所有権移転登記をするよう求めることはできない。

本問は、抵当権者の債権回収を確実にする制度である「詐害行為取消権」の問題であり、「債権者代位権」も出題歴あり。概要はおさえたい問題で手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

「解 説」・・・・・正解(4)

(1)×。「履行期前の詐害行為取消権行使の可否」

確かに、詐害行為取消権は、債権者に債務者の詐害行為を取り消す権利を認め総債権者のために債務者の責任財産の減少の防止を図り債権の回収を容易にするためのものであるが、債務者の財産管理の自由を制限するものであることから、制限的に認められる。

しかし↓

詐害行為時点において、債権が発生済みであれば、債権者は取消権を行使できる。

従って↓

ABに対する債権が、発生済みでかつ履行期が到来している場合でなければ、Aは取消権を行使できない」とするのは・・×

 

(2)×。「相手方の善意の場合の詐害行為取消権行使の可否」

確かに、詐害行為取消権は、債務者の責任財産の減少の防止を図り債権の回収を容易にするためのものであるが、詐害行為取消権の行使により、詐害行為の相手方に不測の損害を与えることはできない。

そこで↓

詐害行為の相手方が売却時に債権者を害する売却であることを意図していた場合に限り、債権者は取消権を行使できる。

従って↓

Bが売却時においてこの売却がBの債権者を害することを意図していた場合は、Aは取消権を行使できる」とするのは・・×。

 

(3)×。「相当対価での土地売却と詐害行為取消権行使の可否」

確かに、土地を相当の対価(時価)で売却する行為は、債務者の責任財産の減少行為とはならないとも思え問題となる。

この点↓

判例は、土地を費消しやすい金銭に変えることも詐害行為に該当するとする。

従って↓

Aは取消権を行使できない」とするのは・・×。       

 

(4)○。「詐害行為取消と自己への所有権移転登記の可否」

確かに、詐害行為取消権は、総債権者のために債務者の責任財産の減少の防止を図り債権の回収を容易にするためのものである。

そこで↓

債権者Aが、直接自分に対して甲土地の所有権移転登記をするよう求めることは、実質的に優先弁済を受けることとなり、総債権者の保護を図る詐害行為取消権の趣旨に反することとなるのでできない。

              従って↓

ACに、直接自分に対して甲土地の所有権移転登記をするよう求めることはできない」ので・・○。

 

H18年〔問7〕・・・「連帯保証と物上保証人」・・正解率約45%

 A銀行のB社に対する貸付債権につき、Cは、B社の委託を受けその全額につき連帯保証するとともに、物上保証人として自己の所有する土地に担保設定している。DもB社の委託を受け全額につき連帯保証している。保証人各自の負担部分は平等である。A銀行とB、C及びDとの間にその他特段の約定はない。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 Cが、A銀行に対して債権全額につき保証債務を履行した場合、その全額につきB社に対する求償権を取得する。

2 Cが、A銀行に対して債権全額につき保証債務を履行した場合、その半額につきDに対する求償権を取得する。

3 Cが、担保物の処分代金により、A銀行に対して債権の3分の2につき物上保証に基づく弁済をした場合、Cが取得するB社に対する求償権は、A銀行のB社に対する貸付債権に劣後する。

4 Dが、Aに対して債権全額につき保証債務を履行した場合、Cの物上保証の担保物件の価額相当額につきCに対する求償権を取得する。

本問は、連帯保証と物上保証人であり、類似制度は差異の正確な理解を問う問題・・・・パスするのはもったいない問題。

「解 説」・・・・正解(4)

(1)○。「保証債務の履行と主債務者への求償の可否」

確かに、委託を受けた保証債務の保証人は、その債務の弁済ができるのが原則である。

そこで↓

当該保証人が保証債務を履行した場合、主債務者に対して求償権を取得できるか問題となる。

この点↓

民法は、保証人が保証債務を履行した場合は,主債務者に対して,求償権を取得しその範囲内で,債権者に代位することができるとした。

従って↓

「Cが、A銀行に対して債権全額につき保証債務を履行した場合、その全額につきB社に対する求償権を取得する」ので・・○。

 

(2)○。「連帯保証人の負担部分を超える範囲についての求償権の可否」

確かに、連帯保証人は、対内的には負担割合を有するのが原則である。

そこで↓

連帯保証人のうちの1人が,保証債務を履行したときは,負担部分を超える範囲については,その分を他の連帯保証人に求償するか問題となる。

この点↓

民法は、公平の観点より連帯保証人のうちの1人が,保証債務を履行したときは,負担部分を超える範囲については、他の連帯保証人に求償することができるとした。

従って↓

(連帯保証人Cは)、「その半額につき(連帯保証人)Dに対する求償権を取得する」ので・・○。

 

(3)○。「一部弁済と代位の可否及び債権者との優劣」

確かに、弁済は債権の消滅事由であるので、債権の一部について弁済をした場合、その弁済した価額に応じて,債権者と共に権利を行使することができる。

そこで↓

保証人である弁済者と債権者との優劣が問題となる。

この点↓

判例は、その権利の行使については,債権者が優先するとした。

従って↓

「Cが取得するB社に対する求償権は、A銀行のB社に対する貸付債権に劣後する」ので・・○。

 

(4)×。「弁済による代位の範囲」

確かに、連帯保証人は、対内的には負担割合を有するのが原則である。

そこで↓

連帯保証人のうちの1人が,保証債務を履行したときは,物上保証の担保物件の価額相当額について求償できるか問題となる。

この点↓

民法は、公平の観点より負担部分を超える額(主たる債務の半額)とした。

従って↓

「Cの物上保証の担保物件の価額相当額につきCに対する求償権を取得する」とするのは・・×。

 

H19年〔問9〕・・・「債権譲渡」・・正解率約35%

 債権の譲渡に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 指名債権が二重に譲渡され、確定日付のある各債権譲渡通知が同時に債務者に到達したときは、各債権譲受人は、債務者に対し、債権金額基準で接分した金額の弁済請求しかできない。

2 指名債権の性質を持つ預託金会員制ゴルフクラブの会員権の譲渡については、ゴルフ場経営会社が定める規定に従い会員名義書換えの手続を完了していれば、確定日付のある債権譲渡通知又は確定日付のある承諾のいずれもない場合でも、ゴルフ場経営会社以外の第三者に対抗できる。

3 契約時点ではまだ発生していない将来債権でも、発生原因や金額などで目的債権を具体的に特定することができれば、譲渡することができ、譲渡時点でその債権発生の可能性が低かったことは譲渡の効力を直ちに否定するものではない。

4 指名債権譲渡の予約契約を締結し、この予約契約締結の事実を確定日付のある証書により債務者に通知していれば、予約の完結によりなされる債権譲渡の効力を債務者以外の第三者に対抗することができる。

本問は、債権譲渡の手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

 

H17年〔問1〕・・・「売買契約と各種の関係」・・正解率約35%

 自己所有の土地を売却するAの売買契約の相手方に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 買主Bが被保佐人であり、保佐人の同意を得ずにAとの間で売買契約を締結した場合、当該売買契約は当初から無効である。

2 買主Cが意思無能力者であった場合、Cは、Aとの間で締結した売買契約を取り消せば、当該契約を無効にできる。

3 買主である団体Dが法律の規定に基づかずに成立した権利能力を有しない任意の団体であった場合、DがAとの間で売買契約を締結しても、当該土地の所有権はDに帰属しない。

4 買主Eが婚姻している未成年者であり、当該婚姻がEの父母の一方の同意を得られないままになされたものである場合には、Eは未成年者であることを理由に当該売買契約を取り消すことができる。

本問は、売買契約と各種の関係を正確に理解しているか否かの複合問題。特に肢3権利能力なき社団及び肢4未成年者の婚姻の手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

「解 説」・・・・正解(3)

(1)×。「保佐人の不同意不動産売買契約の取り扱い」

確かに、被保佐人は、事理弁識能力が著しく不十分な者であることから制限行為能力者とし、保護者である保佐人の同意を得ずに重要な法律行為をした場合、当該法律行為を取り消すことができるとして保護した。

そこで↓

高額な不動産の売買契約は、取り消しの対象となる。

従って↓

「当該売買契約は当初から無効である」とするのは・・×。

 

(2)×。「意思無能力者のした契約の効力」

確かに、「私的自治の原則」を採用する民法の下では、有効な法律行為を行うに際しては、意思能力は不可欠であり、当該意思能力を欠く者のした法律行為(売買契約)は、初めから「無効」とした。

従って↓

「Cは、Aとの間で締結した売買契約を取り消せば、当該契約を無効にできる」とするのは・・×。

 

(3)○。「権利能力のない団体」

確かに、「私的自治の原則」を採用する民法の下では、有効な法律行為を行うには、①権利能力と②意思能力は不可欠である。

そこで↓

法律の規定に基づかずに成立した権利能力を有しない任意の団体の場合、権利能力がない以上、権利・義務の主体となることはできないので、仮に買主として売買契約をしたとしても所有権は帰属しないこととなる。

従って↓

「DがAとの間で売買契約を締結しても、当該土地の所有権はDに帰属しない」ので・・○。

*不動産の登記については、①代表者の個人名義(代表者という肩書きはつけないで登記),または②構成員全員の共有名義。

*権利能力のない団体(権利能力なき社団) でも,訴訟の当事者〔原告・被告〕となることはできる。

 

(4)×。「父母の一方のみの婚姻同意と成年擬制の成否」

確かに、男18、女16歳で親権者の同意を得れば婚姻はでき、この同意は父母の一方のみによる場合でも有効な婚姻となる。

そこで↓

未成年者が有効な婚姻をしたときでも、法律行為を成すには親権者の同意が必要とした場合、当該夫婦の独立した社会生活ができなくなってしまうことから、成年に達したものとみなすこととし(成年擬制)、未成年者であることを理由とする売買契約等を取り消すことはできないとした。

従って↓

「Eは未成年者であることを理由に当該売買契約を取り消すことができる」とするのは・・×。

*未成年者が離婚した場合でも成年擬制のままである。

 

H19年〔問10〕・・・「売買契約と各種関係」・・正解率約36%

 平成19年9月1日にA所有の甲建物につきAB間で売買契約が成立し、当該売買契約において同年9月30日をもってBの代金支払と引換えにAは甲建物をBに引き渡す旨合意されていた。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 甲建物が同年8月31日時点でAB両者の責に帰すことができない火災により滅失していた場合、甲建物の売買契約は有効に成立するが、Aの甲建物引渡し債務も、Bの代金支払債務も共に消滅する。

2 甲建物が同年9月15日時点でAの責に帰すべき火災により滅失した場合、有効に成立していた売買契約は、Aの債務不履行によって無効となる。

3 甲建物が同年9月15日時点でBの責に帰すべき火災により滅失した場合、Aの甲建物引渡し債務も、Bの代金支払債務も共に消滅する。

4 甲建物が同年9月15日時点で自然災害により滅失しても、AB間に「自然災害による建物滅失の危険は、建物引渡しまでは売主が負担する」との特約がある場合、Aの甲建物引渡し債務も、Bの代金支払債務も共に消滅する。

本問は、危険負担等の売買契約と各種関係の複合問題。各制度の整理の手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

 

H16年〔問8〕・・・「賃料債務の相殺」・・正解率約40%

 Aは,B所有の建物を賃借し,毎月末日までに翌月分の賃料50万円を支払う約定をした。またAは敷金300万円をBに預託し,敷金は賃貸借終了後明渡し完了後にBがAに支払うと約定された。AのBに対するこの賃料債務に関する相殺についての次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。

1 Aは,Bが支払不能に陥った場合は,特段の合意がなくても,Bに対する敷金返還請求権を自働債権として,弁済期が到来した賃料債務と対当額で相殺することができる。

2 AがBに対し不法行為に基づく損害賠償請求権を有した場合,Aは,このBに対する損害賠償請求権を自働債権として,弁済期が到来した賃料債務と対当額で相殺することはできない。

3 AがBに対して商品の売買代金請求権を有しており,それが平成16年9月1日をもって時効により消滅した場合,Aは,同年9月2日に,このBに対する代金請求権を自働債権として,同年8月31日に弁済期が到来した賃料債務と対当額で相殺することはできない。

4 AがBに対してこの賃貸借契約締結以前から貸付金債権を有しており,その弁済期が平成16年8月31日に到来する場合,同年8月20日にBのAに対するこの賃料債権に対する差押があったとしても,Aは,同年8月31日に,このBに対する貸付金債権を自働債権として,弁済期が到来した賃料債務と対当額で相殺することができる。

本問は、賃料債務の相殺を正確に理解しているか否かの複合問題。特に「賃貸借」の手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

「解 説」・・・・正解(4)

(1)×。「敷金返還請求権と賃料債務との相殺の可否」

確かに、相殺をするには、自働債権は常に弁済期にあることが必要である。また、敷金は賃貸借契約から生じた賃借人の債務を担保するもので、当該敷金返還請求権は原則として賃貸目的物の明渡後に発生する。

そこで↓

(賃借人)Aは,(賃貸人)Bに対する敷金返還請求権を自働債権として,弁済期が到来した賃料債務と対当額で相殺できるか問題となる。

この点↓

敷金返還請求権は、明け渡しがない以上弁済期にないので相殺はできない。

従って↓

(賃借人)Aは,「(賃貸人)Bに対する敷金返還請求権を自働債権として,弁済期が到来した賃料債務と対当額で相殺することができる」とするのは・・×。

 

(2)×。「不法行為の損害賠償と相殺の可否」

確かに、相殺は、公平の観点より認められた債権・債務の簡易決済の1つである。また、不法行為に基づく損害賠償制度は、被害者の現実的な救済を目的とするものである。

そこで↓

(被害者)Aは,この(加害者)Bに対する損害賠償請求権を自働債権として,弁済期が到来した賃料債務と対当額で相殺ができるか問題となるが、(被害者)Aからの「相殺」の主張は、被害者の現実的な救済の趣旨に反するものではないし、また、不法行為の誘発とはならないので可能である。

従って↓

「Aは,このBに対する損害賠償請求権を自働債権として,弁済期が到来した賃料債務と対当額で相殺することはできない」とするのは・・×。

 

(3)×。「消滅時効した債権と相殺主張の可否」

確かに、相殺は、公平の観点より認められた債権・債務の簡易決済の1つである。また、債権が消滅時効したときは、当該債権は初めから存在しなかったこととなるので、相殺できないのが原則である。

そこで↓

時効消滅した債権が満了前に相殺適状にあった場合、その時効消滅した債権を自働債権として相殺できるのか問題となる。

この点↓

時効消滅した債権が満了前に相殺適状にあったときは、当事者双方は相殺されたものと期待するのが合理的意思であるので、Aは,時効消滅した債権を自働債権とし相殺できる。

従って↓

「このBに対する代金請求権を自働債権として,同年8月31日に弁済期が到来した賃料債務と対当額で相殺することはできない」とするのは・・×。

 

(4)○。「差押後に取得した債権と相殺の可否」

確かに、差押さえは処分権限を制約するものであるし、相殺は公平の観点より認められた債権・債務の簡易決済の1つである。

そこで↓

差押さえ後に取得した債権を自働債権とする当該差押さえられた債権と相殺することはできないのが原則である。

しかし↓

「(第三債務者)AがBに対してこの賃貸借契約締結以前から貸付金債権を有していた」のであり、その後に賃料債権に対する差押があった場合には、Aは,貸付金債権を自働債権として,弁済期が到来した賃料債務と対当額で相殺できる。

従って↓

「Aは,同年8月31日に,このBに対する貸付金債権を自働債権として,弁済期が到来した賃料債務と対当額で相殺することができる」ので・・○。

*前問の解説の②のケースに該当する。

 

H20年〔問7〕・・・「善管注意義務」・・正解率約45%

 注意義務に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 ある物を借り受けた者は、無償で借り受けた場合も、賃料を支払う約束で借り受けた場合も、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。

2 委託の受任者は、報酬を受けて受任する場合も、無報酬で受任する場合も、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負う。

3 商人ではない受寄者は、報酬を受けて寄託を受ける場合も、無報酬で寄託を受ける場合も、自己の財産と同一の注意をもって寄託物を保管する義務を負う。

4 相続人は、相続放棄前はもちろん、相続放棄をした場合も、放棄によって相続人となった者が管理を始めるまでは、固有財産におけると同一の注意をもって相続財産を管理しなければならない。

本問は、善管注意義務の複合問題であり、整理を怠った手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

「解 説」・・・・・正解(3)

(1)○。「使用貸借の場合の善管注意の要否」

確かに、他人の物を管理・保管している場合の注意義務には、原則として報酬を得て行う①「善良な管理者の注意義務(善管注意義務)」と、無報酬の場合の②「自己物と同一の注意義務」に大別される。

そこで↓

無償で借り受けた場合を使用貸借といい、賃料を支払う約束で借り受けた場合を賃貸借という。両者はいずれも借り受けた物を返還する義務を負っているので、使用貸借でも返還するまでは、善良なる管理者としての注意義務を負うこととなる(400条)。

従って↓

「善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない」ので・・○。

 

(2)。「無報酬受任者の善管注意の要否」

確かに、委託は信頼関係を基礎に成り立つものである。

そこで↓

受任者は、その信頼に応えるべきであることから、報酬を受けて受任する場合も、無報酬で受任する場合も、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負う(644条)。

従って↓

「善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負う」ので・・○。

 

(3)×。「無報酬受寄者の善管注意の要否」

確かに、寄託は、当事者の一方が相手方のために保管をすることを約してある物を受け取ることによって、その効力を生ずる(657条)。

そこで↓

有償の場合には、善良な管理者の注意をもって寄託物の保管する義務を負う(400条)。

しかし↓

無報酬寄託の場合には、公平の観点より寄託物の保管については注意義務を軽減され自己の財産と同一の注意義務で足りるとした(659条)。

従って↓

「報酬を受けて寄託を受ける場合も、無報酬で寄託を受ける場合も、自己の財産と同一の注意をもって寄託物を保管する義務を負う」とするのは・・×。       

 

(4)○。「相続放棄をした者の善管注意の要否」

確かに、相続の放棄をした場合、初めから相続人でなかったこととなる(939条)。

しかし↓

相続人は、相続放棄前はもちろん、相続放棄をした場合も、放棄によって相続人となった者が管理を始めるまでは、固有財産におけると同一の注意をもって相続財産を管理しなければならない(918条1項)。

              従って↓

「固有財産におけると同一の注意をもって相続財産を管理しなければならない」ので・・○。

 

H16年〔問10〕・・・「瑕疵担保責任」・・正解率約20%

 宅地建物取引業者ではないAB間の売買契約における売主Aの責任に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。

1 Bは住宅建設用に土地を購入したが,都市計画法上の制約により当該土地に住宅を建築することができない場合には,そのことを知っていたBは,Aに対し土地売主の瑕疵担保責任を追及することができない。

2 Aは,C所有の土地を自ら取得するとしてBに売却したが,Aの責に帰すべき事由によってCから所有権を取得できず,Bに所有権を移転できない場合,他人物売買であることを知っていたBはAに対して損害賠償を請求できない。

3 Bが購入した土地の一部を第三者Dが所有していた場合,Bがそのことを知っていたとしても,BはAに対して代金減額請求をすることができる。

4 Bが敷地賃借権付建物をAから購入したところ,敷地の欠陥により擁壁に亀裂が生じて建物に危険が生じた場合,Bは敷地の欠陥を知らなかったとしても,Aに対し建物売主の瑕疵担保責任を追及することはできない。

本問は、売主の担保責任を正確に理解しているか否かの複合問題。暗記勉強の弱点を突かれた問題、なぜ・どうしてで勉強すれば対応OK、・・・・パスするのはもったいない問題。

「解 説」・・・・正解(2)

(1)○。「法律的制限と売主の瑕疵担保責任の成否」

確かに、売主の瑕疵担保責任は、売買目的物の瑕疵により等価的均衡がくずれている場合にその均衡を図る制度であり、無過失責任となる。

そこで↓

物理的瑕疵でない「都市計画法上の制約により当該土地に住宅を建築することができない場合」も瑕疵担保責任を追及できるか問題となる。

この点↓

判例は、「隠れた瑕疵」は物理的な瑕疵にとどまらず,法律等の制限も該当し、買主が善意無過失であれば,契約の解除や損害賠償請求をすることができる。

しかし↓

本件の場合、買主がそのことを知っていた(悪意)以上、買主自身の内心では等価的均衡が得られているので「解除や損害賠償請求」はできない。

従って↓

「そのことを知っていたBは,Aに対し土地売主の瑕疵担保責任を追及することができない」ので・・○。

隠れた瑕疵とは

物理的瑕疵 (欠陥)

法律的な瑕疵 (制限)

「判例上の具体例

・工場用地として土地を買ったら、河川法上の制限で建築物が建てられない。

・宅地造成しようとして山林を買ったら、森林法上の制限で宅地が造成できない。

 

(2)×。「全部他人物売買と債務不履行」

確かに、民法は他人物売買の場合でも売主は当該目的物を取得した後に買主に引き渡すことができる可能性を有することから有効とした。

そこで↓

売主Aの責に帰すべき事由で所有者Cから所有権を取得できず,他人物売買であることを知っていた買主Bに所有権を移転できない場合,BはAに対して損害賠償を請求ができるか問題となる。

この点↓

売主の瑕疵担保責任は、売買目的物の瑕疵により等価的均衡がくずれている場合にその均衡を図る制度であり、買主が善意無過失であれば,契約の解除や損害賠償請求をすることができるが、買主がそのことを知っていた(悪意)以上、買主自身の内心では不可能であることを予期できたのであり不測の損害はないことから「損害賠償請求」はできない。

しかし↓

本件の場合、売主Aの責に帰すべき事由で所有者Cから所有権を取得できないのであり、債務不履行責任としての「損害賠償請求」はできる。

従って↓

「他人物売買であることを知っていたBはAに対して損害賠償を請求できない」とするのは・・×。

 態   様

売主の帰責事由有

悪意の買主

瑕疵担保責任

無過失責任

「解除」可、「損害賠償」不可

債務不履行責任

過失責任

「解除・損害賠償」可

 

(3)○。「一部他人物売買と悪意の買主の代金減額請求の可否」

確かに、民法は他人物売買の場合でも売主は当該目的物を取得した後に買主に引き渡すことができる可能性を有することから有効としたので、「一部他人物」の場合も同様であるので、「一部他人物」であることを知っていた買主の代金減額請求の可否が問題となる。

この点↓

売主の瑕疵担保責制度が等価的均衡を図るものであることからすれば、たとえ買主が悪意であったとしても、等価的均衡がくずれている限り、代金の1部減額請求を認め均衡を図るべきである。

そこで↓

民法は、悪意の買主にも代金減額請求を認めた。

従って↓

「Bがそのことを知っていたとしても,BはAに対して代金減額請求をすることができる」ので・・○。

買主の善・悪

解除

損害賠償

代金減額

除斥期間

善意

 ○

 ○

  ○

知ったときから1年

悪意

 ×

 ×

  ○

契約時から1年

 

(4)○。「敷地賃借権付建物売買と敷地の瑕疵担保責任の成否」

確かに、売主の瑕疵担保責任は、売買目的物の瑕疵により等価的均衡がくずれている場合にその均衡を図る制度であり、無過失責任となる。

そこで↓

「敷地賃借権付建物」売買の敷地の欠陥に対して瑕疵担保責任が発生するのか問題となる。

この点↓

「敷地賃借権付建物」売買の目的物は、借地権+建物であり敷地そのものは対象ではないので、瑕疵担保責任が発生しないこととなる。

従って↓

「(買主)Bは敷地の欠陥を知らなかったとしても,(売主)Aに対し建物売主の瑕疵担保責任を追及することはできない」ので・・○。

 

H20年〔問9〕・・・「瑕疵担保責任」・・正解率約58%

宅地建物取引業者であるAが、自らが所有している甲土地を宅地建物取引業者でないBに売却した場合のAの責任に関する次の記述のうち、民法及び宅地建物取引業法の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。

1 売買契約で、Aが一切の瑕疵担保責任を負わない旨を合意したとしても、Aは甲土地の引渡しの日から2年間は、瑕疵担保責任を負わなければならない。

2 甲土地に設定されている抵当権が実行されてBが所有権を失った場合、Bが甲土地に抵当権が設定されていることを知っていたとしても、BはAB間の売買契約を解除することができる。

3 Bが瑕疵担保責任を追及する場合には、瑕疵の存在を知った時から1年以内にAの瑕疵担保責任を追及する意思を裁判外で明確に告げていればよく、1年以内に訴訟を提起して瑕疵担保責任を追及するまでの必要はない。

4 売買契約で、Aは甲土地の引渡しの日から2年間だけ瑕疵担保責任を負う旨を合意したとしても、Aが知っていたのにBに告げなかった瑕疵については、瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権が時効で消滅するまで、Bは当該損害賠償を請求できる。

本問は、売主の担保責任を正確に理解しているか否かの複合問題。暗記勉強の弱点を突かれた問題、なぜ・どうしてで勉強すれば対応OK、・・・・パスするのはもったいない問題。

「解 説」・・・・・正解(1) 

(1)×。「業者自ら売主と瑕疵担保責任を負わない特約の効力」

確かに、瑕疵担保責任は任意規定であることから、当事者間の特約により排除できるのが原則である。

しかし↓

宅建業法は、業者自ら売主となる場合の瑕疵担保責任については、民法のきていよりも買主に不利となる特約は無効とする(業法40条1項)。

そこで↓

Aが一切の瑕疵担保責任を負わない旨を合意(=特約)」は、無効となり民法の規定が適用され、「買主が瑕疵を知ったときから1年以内」となる(570条・566条)。

従って↓

Aは甲土地の引渡しの日から2年間は」とするのは・・×。

 

(2)○。「抵当権実行による所有権喪失と悪意の買主の解除の可否」

確かに、売買目的物に抵当権設定があり、当該抵当権が実行されたとき買主は所有権を失うこととなるので、悪意の買主にも解除権が認められるか問題となる。

この点↓

民法567条は、債務は弁済すべきものであることから、悪意の買主にも解除権を認めている。

従って↓

BAB間の売買契約を解除することができる」ので・・○。

 

(3)○。「瑕疵担保責任を追及の方法」

確かに、瑕疵担保責任は売買による等価的均衡を図るもので、売主の無過失責任であり、買主が、瑕疵担保責任を追及する場合には、瑕疵の存在を知った時から1年以内に訴訟を提起して瑕疵担保責任を追及する必要があるのか問題となる

この点↓

民法は、瑕疵の存在を知った時から1年以内に訴訟を提起することを要求していないので、裁判外で明確に告げていればよいこととなる。

従って↓

「1年以内に訴訟を提起して瑕疵担保責任を追及するまでの必要はない」ので・・○。       

 

(4)○。「売主が知っていた瑕疵と瑕疵担保責任を負わない特約の効力」

確かに、宅建業法40条1項は、業者自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、瑕疵担保責任の期間についてその目的物の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、買主に不利となる特約をしてはならない。

そこで↓

業者Aが知っていたのに買主Bに告げなかった瑕疵に基づく損害賠償請求権ができるか問題となるが、公平の観点より特約がある場合でも業者Aが知っていたのに買主Bに告げなかった瑕疵に基づく損害賠償請求権ができるとした(民法572条)。又、判例は、損害賠償請求は時効で消滅するまで、Bは当該損害賠償を請求できる。

              従って↓

Bは当該損害賠償を請求できる」ので・・○。

 

H16年〔問11〕・・・「組合契約」・・正解率約35%

 AはBと,それぞれ1,000万円ずつ出資して,共同で事業を営むことを目的として民法上の組合契約を締結した。この場合,民法の規定によれば,正しいものはどれか。

1 AとBは,出資の価額が均等なので,損益分配の割合も均等に定めなければならない。

2 組合への出資金で不動産を購入し組合財産とした場合,この組合財産は総組合員の共有に属する。

3 組合財産たる建物の賃借人は,組合に対する賃料支払債務と,組合員たるAに対する債権とを相殺することができる。

4 組合に対し貸付金債権を取得した債権者は,組合財産につき権利行使できるが,組合員個人の財産に対しては権利行使できない。

本問は、組合契約を正確に理解しているか否かの問題。マイナーすぎる・・・・パスする問題。

「解 説」・・・・正解(2)

(1)×。「損益分配の割合」

確かに、組合とは,2人以上の当事者が,相互に出資 (金銭・動産・不動産,労務,信用の提供)をし、共同の事業を営むことを約束することによって成立する。すなわち、団体性は弱く、権利能力はない。

そこで↓

損益分配の割合が問題となる。

この点↓

損益分配の割合がを定めなかったときには,出資価額割合により分配され、定めがあるときにはそれに従うこととなる。

従って↓

「損益分配の割合も均等に定めなければならない」とするのは・・×。

「組合の特徴」

①組合財産は「合有」となる。

②分割請求不可、持分処分不可、

③組合の債務者は、組合員に対する債権と相殺は不可。

④各組合員は、組合債務に対して責任を負う。

⑤組合脱退の時、払戻請求ができる。

(2)○。「組合財産の帰属」

確かに、組合財産は総組合員の共有に属するので、組合への出資金で不動産を購入し組合財産とした場合、その組合財産は総組合員の共有となる。

従って↓

「組合への出資金で不動産を購入し組合財産とした場合,この組合財産は総組合員の共有に属する」ので・・○。

 

(3)×。「組合の債務者による相殺の禁止」

確かに、組合財産は総組合員の共有に属するので、組合財産たる建物の賃借人は,組合に対する賃料支払債務と,組合員たるAに対する債権とを相殺することができるか問題となる。

この点↓

民法は、組合の権利は各組合員が共有し,組合が持つ債権は組合が行使するので,組合の債権は各組合員の分割請求はできず、組合の債務者は,その債務を組合員に対する債権で相殺することはできないとした。

従って↓

「組合員たるAに対する債権とを相殺することができる」とするのは・・×。

 

(4)×。「組合員の無限責任」

確かに、組合の債務は組合員全員に帰属し,その責任及び義務は組合員個人に及ぶ。

従って↓

「組合財産につき権利行使できるが,組合員個人の財産に対しては権利行使できない」とするのは・・×。

 

H17年〔問10〕・・・「使用貸借契約」・・正解率約58%

 Aは、自己所有の建物について、災害により居住建物を失った友人Bと、適当な家屋が見つかるまでの一時的住居とするとの約定のもとに、使用貸借契約を締結した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 Bが死亡した場合、使用貸借契約は当然に終了する。

2 Aがこの建物をCに売却し、その旨の所有権移転登記を行った場合でも、Aによる売却の前にBがこの建物の引渡しを受けていたときは、Bは使用貸借契約をCに対抗できる。

3 Bは、Aの承諾がなければ、この建物の一部を、第三者に転貸して使用収益させることはできない。

4 適当な家屋が現実に見つかる以前であっても、適当な家屋を見つけるのに必要と思われる客観的な時間を経過した場合は、AはBに対し、この建物の返還を請求することができる。

本問は、賃貸借の対極にある使用貸借を正確に理解しているか否かの問題。類似制度・対極にある制度との対比の手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

「解 説」・・・・正解(2)

(1)○。「借主の死亡と使用貸借の終了の可否」

確かに、使用貸借契約は、無償でであることから賃貸借以上に極めて信頼関係が重要である。

そこで↓

民法は、使用貸借目的物の使用・収益の方法は、借主が異なることで重大な影響をうけることから、借主の死亡を使用貸借の終了事由とした。

従って↓

「使用貸借契約は当然に終了する」ので・・○。

*賃借権は相続されるが、使用借権は相続の対象にならない。

 

(2)×。「使用貸借権の第三者(借用物の譲受人・抵当権者等)対抗力の可否」

確かに、使用貸借契約は、無償でである。

そこで↓

民法は、借主の保護に欠けてもやむを得ないとし、(借主)Bは使用貸借契約を(新所有者)Cに対抗できないとした。

従って↓

「Bは使用貸借契約をCに対抗できる」とするのは・・×。

*使用貸借を登記することはできない。

 

(3)○。「使用貸借と借主の転借の可否」

 確かに、使用貸借契約は、無償でであることから賃貸借以上に極めて信頼関係が重要である。

そこで↓

民法は、使用貸借目的物の使用・収益の方法は、借主が異なることで重大な影響をうけることから、第三者への転貸を認めていない。これに反した場合、借主がこれに違反すると契約の解除をすることができる

従って↓

「第三者に転貸して使用収益させることはできない」ので・・○。

 

(4)○。「借用物の返還の時期制限の有無」

確かに、使用貸借契約は、無償でである。

そこで↓

民法は、借主の保護に欠けてもやむを得ないとし、使用収益の定めがある場合でも、使用収益をするのに足りる期間が経過により返還請求ができる。

          従って↓

「AはBに対し、この建物の返還を請求することができる」ので・・○。

使用収益の定めがある

契約に定められた使用収益を終わったとき

借主には終了時点で返還義務がある。

契約に定められた使用収益を終わる前でも,

使用収益をするのに足りる期間が経過後、直ちに返還請求できる。

使用収益の定めがない

いつでも返還請求できる。

 

H19年〔問14〕・・・「一時使用目的の建物の賃貸借」・・正解率約45%

 借地借家法第38条の定期建物賃貸借(以下この問において「定期建物賃貸借」という。)と同法第40条の一時使用目的の建物の賃貸借(以下この問において「一時使用賃貸借」という。)に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 定期建物賃貸借契約は書面によって契約を締結しなければ有効とはならないが、一時使用賃貸借契約は書面ではなく口頭で契約しても有効となる。

2 定期建物賃貸借契約は契約期間を1年以上とすることができるが、一時使用賃貸借契約は契約期間を1年以上とすることができない。

3 定期建物賃貸借契約は契約期間中は賃借人から中途解約を申し入れることはできないが、一時使用賃貸借契約は契約期間中はいつでも賃借人から中途解約を申し入れることができる。

4 賃借人が賃借権の登記もなく建物の引渡しも受けていないうちに建物が売却されて所有者が変更すると、定期建物賃貸借契約の借主は賃借権を所有者に主張できないが、一時使用賃貸借の借主は賃借権を所有者に主張できる。

本問は、一時使用賃貸借契約を通じて借地借家法を正確に理解しているかが問われた複合問題。各制度の整理の手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

 

H15年〔問13〕・・・「借地借家法(借地)」・・正解率約52%

 Aが,Bに,A所有の甲地を建物の所有を目的として賃貸し,Bがその土地上に乙建物を新築し,所有している場合に関する次の記述のうち,借地借家法の規定によれば,誤っているものはどれか。

1 Bが,乙建物につき自己名義の所有権の保存登記をしている場合は,甲地につき賃借権の登記をしていないときでも,甲地をAから譲渡され所有権移転登記を受けたCに対し,甲地の賃借権を対抗できる。

2 乙建物が滅失した場合でも,Bが借地借家法に規定する事項を甲地の上の見やすい場所に掲示したときは,Bは,甲地に賃借権の登記をしていなくても,滅失のあった日から2年間は,甲地をAから譲渡され所有権移転登記を受けたDに対し,甲地の賃借権を対抗できる。

3 Bが,乙建物をEに譲渡しようとする湯合において,Eが甲地の賃借権を取得してもAに不利となるおそれがないにもかかわらず,Aがその賃借権の譲渡を承諾しないときは,Bは,裁判所にAの承諾に代わる許可をするよう申し立てることができる。

4 Bが,乙建物を1年以上自己使用しておらず,かつ,他人に譲渡しようとすることもない場合,Aは,裁判所に,相当の対価の提供を条件として,自ら乙建物の譲渡及び甲地の賃借権の譲渡を受ける旨を申し立てることができる。

本問は、借地借家法を正確に理解しているか否かの問題。借地を理解すればOK・・・・パスするのはもったいない問題。

「解 説」・・・・正解(4)

(1)○。 「建物登記による借地権の第三者対抗力の可否」

確かに、債権である賃借権は、第三者に対する対抗力がないのが原則であるし、また、土地と建物は別個の不動産である。

そこで↓

(借地人)Bが,賃借権について未登記であるが、乙建物につき自己名義の所有権の保存登記をしている場合、甲地の新所有者Cに対して,甲地の賃借権を対抗できるか問題となる。

この点↓

借地借家法は、賃借権の登記や地上権の登記がなくても,借地上建物の登記(所有権保存登記・表題登記)があれば、,第三者への対抗力をもつとした。

従って↓

「甲地をAから譲渡され所有権移転登記を受けたCに対して,甲地の賃借権を対抗できる」ので・・○。

*借地権の対抗力

原則

借地権の登記

例外

借地上の建物の登記でも可。ただし、真正な登記名義が必要。

 

(2) ○。「建物の滅失と借地権の対抗力の可否」

確かに、借地借家法は借地人の借地上に所有する建物登記をもって、第三者に対する借地権の対抗力を認めている。

しかし↓

借地人の乙建物が滅失した場合は、当該建物登記は実態のない登記で「無効」となり、対抗力はないと思われ問題となる。

この点↓

借地借家法は、借地人保護の観点より、Bが借地借家法に規定する滅失した建物登記に関する事項を甲地の上の見やすい場所に掲示したときは,Bは,甲地に賃借権の登記をしていなくても,滅失のあった日から2年間は,甲地をAから譲渡され所有権移転登記を受けたDに対し,甲地の賃借権を対抗できるとした。

従って↓

「甲地をAから譲渡され所有権移転登記を受けたDに対し,甲地の賃借権を対抗できる」ので・・○。

*滅失後2年が経過する前に新築し、当該建物登記をしないと対抗力はなくなる。

 

(3) ○。「地主の未承諾借地権譲渡と裁判所による代諾の可否」

確かに、債権である賃借権は、信頼関係を基礎に成り立っているので、当該賃借権を第三者に譲渡するには地主の承諾が必要であり、借地人BによるEへの乙建物譲渡を、地主Aに不利となるおそれがないにもかかわらず承諾しない場合が問題となる。

この点↓

借地借家法は、借地人Bの投下資本の回収を図るために、裁判所に賃貸人Aの承諾に代わる許可を申立てることができるとした。

従って↓

「裁判所にAの承諾に代わる許可をするよう申し立てることができる」ので・・○。

 

(4) ×。「借地人の未使用と設定者の借地権買取請求の可否」

確かに、借地人Bが,乙建物を1年以上自己使用しておらず,かつ,他人に譲渡もしない場合、当該借地権を地主が買い取ることを認めるべきとも思え問題となる。

この点↓

借地借家法には、本件の場合に該当する規定はなく、「Aは,裁判所に,相当の対価の提供を条件として,自ら乙建物の譲渡及び甲地の賃借権の譲渡を受ける旨を申し立てることができる」とは言えない。

従って↓

「Aは,裁判所に,相当の対価の提供を条件として,自ら乙建物の譲渡及び甲地の賃借権の譲渡を受ける旨を申し立てることができる」とするのは・・×。

*借地人が第三者に対する建物譲渡許可を裁判所に申し立てた場合に、借地権設定者は,裁判所に対して相当の対価の提供を条件とし、譲受の申立をすることができる。

 

H16年〔問14〕・・・「借地借家法第32条(賃料増減請求権)」・・正解率約28%

 貸主A及び借主Bの建物賃貸借契約に関する次の記述のうち,賃料増減請求権に関する借地借家法第32条の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。

1 建物が完成した時を始期とする賃貸借契約において,建物建築中に経済事情の変動によってAB間で定めた賃料が不相当になっても,建物の使用収益開始前にBから賃料減額請求を行うことはできない。 

2 AB間の建物賃貸借契約が,Bが当該建物をさらに第三者に転貸する事業を行ういわゆるサブリース契約である場合,使用収益開始後,経済事情の変動によってAB間で定めた賃料が不相当となっても,Bから賃料減額請求を行うことはできない。

3 Bが賃料減額請求権を行使してAB間に協議が調わない場合,賃料減額の裁判の確定時点から将来に向かって賃料が減額されることになる。

4 Aが賃料増額請求権を行使してAB間に協議が調わない場合,BはAの請求額を支払わなければならないが,賃料増額の裁判で正当とされた賃料額を既払額が超えるときは,Aは超過額に年1割の利息を付してBに返還しなければならない。

本問は、借地借家法第32条(賃料増減請求権)を正確に理解しているか否かの問題。借地借家法の手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

「解 説」・・・・正解(1)

(1)○。「建物使用収益開始前の賃料減額請求権の可否」

確かに、経済事情の変動等で賃料が不相当になったときは,一定期間は増額しない旨の特約がある場合を除いて、当事者は,将来に向かって賃料の額の増減を請求することができる。

そこで↓

建物の使用収益開始前に賃借人から賃料減額請求ができるか問題となる。

この点↓

判例は、建物の使用収益の開始前には,賃料減額請求はできないとする。

従って↓

「建物の使用収益開始前にBから賃料減額請求を行うことはできない」ので・・○

*サブリース契約とは,賃貸ビル等を運営管理する事業者が,第三者に転貸する目的で,土地や建物の所有者から土地・建物を一括して借り上げる方式のものである。

 

(2)×。「サブリース契約と賃料減額請求の可否」

確かに、サブリース契約とは,賃貸ビル等を運営管理する事業者が,第三者に転貸する目的で,土地や建物の所有者から土地・建物を一括して借り上げる方式のものである。

この点↓

判例は、建物でのサブリース契約には,借地借家法32条1項の当事者からの増減額請求の規定が適用され得るとした。

従って↓

「使用収益開始後,経済事情の変動によってAB間で定めた賃料が不相当となっても,Bから賃料減額請求を行うことはできない」とするのは・・×。

 

(3)×。「減額の効果発生時期」

確かに、借地借家法は、賃料減額の裁判が確定したときは,その効力は,減額請求の意思表示が相手方に到達した時に遡って生じるとする。

従って↓

「賃料減額の裁判の確定時点から将来に向かって賃料が減額されることになる」とするのは・・×。

 

(4)×。「増額請求協議の不調の取り扱い」

確かに、経済事情の変動等で賃料が不相当になったときは,一定期間は増額しない旨の特約がある場合を除いて、当事者は,将来に向かって賃料の額の増減を請求することができる。

そこで↓

(貸主)Aが賃料増額請求権を行使したが、(借主)Bとの協議が不調の場合の取り扱いが問題となる。

この点↓

借地借家法は、当事者は裁判所に調停を申し立て、借主は当該増額を正当とする裁判が確定するまで相当と認める額の賃料を支払えば足りるとする。

従って↓

「Aが賃料増額請求権を行使してAB間に協議が調わない場合,BはAの請求額を支払わなければならない」とするのは・・×。

*相当額について、

増額請求の場合

借地権者が相当と認める額

減額請求の場合

借地権設定者が相当と認める額

 

H16年〔問13〕・・・「転貸」・・正解率約55%

 AはBに対し甲建物を月20万円で賃貸し,Bは,Aの承諾を得た上で,甲建物の一部をCに対し月10万円で転貸している。この場合,民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば,誤っているものはどれか。

1 転借人Cは,賃貸人Aに対しても,月10万円の範囲で,賃料支払義務を直接に負担する。

2 賃貸人Aは,AB間の賃貸者契約が期間の満了によって終了するときは,転借人Cに対しその旨の通知をしなければ,賃貸借契約の終了をCに対し対抗することができない。

3 AB間で賃貸借契約を合意解除しても,転借人Cに不信な行為があるなどの特段の事情がない限り,賃貸人Aは,転借人Cに対し明渡しを請求することはできない。

4 賃貸人AがAB間の賃貸借契約を賃料不払いを理由に解除する場合は,転借人Cに通知等をして賃料をBに代わって支払う機会を与えなければならない。

本問は、転貸を正確に理解しているか否かの問題。特に「賃貸借」の手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

「解 説」・・・・正解(4)

(1)○。「適法な転貸借と転借人の義務」

確かに、転貸借は原賃貸借を基礎とするものの賃貸人と転借人間には契約関係はないので、転借人は賃貸人に対して直接に義務を負わないとも思え問題となる。

この点↓

民法は、賃貸人の承諾を得て転貸借された場合、転借人は,賃借人(=転貸人)の賃料支払や明渡義務,目的物保管義務などを賃貸人に対して直接に義務を負い、そも範囲は、転貸人が負う義務の範囲内であるとした。

そこで↓

転借人Cは,賃貸人Aに対し、月10万円の範囲で,賃料支払義務を直接に負担すればよい。

従って↓

「転借人Cは,賃貸人Aに対しても,月10万円の範囲で,賃料支払義務を直接に負担する」ので・・○。

①賃貸借の賃料 > 転貸借の賃料 のとき・・・ 転貸借の賃料

②転貸借の賃料 > 賃貸借の賃料 のとき・・・ 賃貸借の賃料

 

 

 

(2)○。「原賃貸借の期間満了終了と転借人に通知の要否」

確かに、転貸借は原賃貸借を基礎とする以上、AB間の(原)賃貸者契約が期間の満了により終了するとき、当然に転貸借契約も終了するとも思え問題となる。

この点↓

民法は、転借人保護のために転借人Cに対しその旨の通知をしなければ、貸借契約の終了をCに対し対抗することができないとした。

従って↓

「転借人Cに対しその旨の通知をしなければ,賃貸借契約の終了をCに対し対抗することができない」ので・・○。

原賃貸借の解除事由

転貸借の終了の可否

①合意解除

賃貸人は,転借人に当然終了を対抗できない。

②期間満了又は(建物)解約申入れにより終了

賃貸人からの通知の日から6ヵ月を経過したとき

③債務不履行による解除

賃貸人が転借人に目的物の返還を請求したとき

 

(3)○。「原賃貸借契約を合意解除と転借人の不信行為の要否」

確かに、転貸借は原賃貸借を基礎とする以上、AB間の(原)賃貸者契約を合意解除し、転借人に対しその旨の通知をした場合、当然に転貸借契約も終了するとも思え問題となる。

この点↓

判例は、転借人保護のため転借人Cに不信な行為があるなどの特段の事情がない限り、賃貸人Aは,転借人Cに対し明渡しを請求できないとした。

従って↓

「転借人Cに不信な行為があるなどの特段の事情がない限り,賃貸人Aは,転借人Cに対し明渡しを請求することはできない」ので・・○。

 

(4)×。「原賃貸借の債務不履行の解除と転借人への支払い機会の要否」

確かに、転貸借は原賃貸借を基礎とする以上、AB間の(原)賃貸者契約が賃料不払いを理由に解除する場合は,転借人に通知等をして賃料を転貸人に代わって支払う機会を与えなければならないのか問題となる。

この点↓

判例は、賃貸人保護のため賃貸人Aは賃借人Bに催告するだけで足り、転借人Cに支払いの機会を与える必要はないとした。

従って↓

「転借人Cに通知等をして賃料をBに代わって支払う機会を与えなければならない」とするのは・・×。

 

H18年〔問10〕・・・「賃貸借契約と各種関係」・・正解率約55%

 AがB所有の建物について賃貸借契約を締結し、引渡しを受けた場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 AがBの承諾なく当該建物をCに転貸しても、この転貸がBに対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、BはAの無断転貸を理由に賃貸借契約を解除することはできない。

2 AがBの承諾を受けてDに対して当該建物を転貸している場合には、AB間の賃貸借契約がAの債務不履行を理由に解除され、BがDに対して目的物の返還を請求しても、AD間の転貸借契約は原則として終了しない。

3 AがEに対して賃借権の譲渡を行う場合のBの承諾は、Aに対するものでも、Eに対するものでも有効である。

4 AがBの承諾なく当該建物をFに転貸し、無断転貸を理由にFがBから明渡請求を受けた場合には、Fは明渡請求以後のAに対する賃料の一部又は一部の支払を拒むことができる。

本問は、賃貸借の手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

「解 説」・・・・正解(2)

(1) ○。「無断転貸と解除の可否」   

確かに、賃貸借契約は、債権であることから信頼関係を基礎として成立するもので、賃借人が、第三者に建物を転貸するには貸主の承諾が必要となる

そこで↓

無断転貸の場合、貸主は常に当該賃貸借契約を解除できるか問題となる。

この点↓

判例は、当該転貸借が、建物の持主に対する「背信的(ウラギリ)行為と認めるに足りない特段の事情がある」ときは、信頼関係は破壊されたと言えないので、解除できないとした。

従って↓

「(賃貸人)Bは(賃借人)Aの無断転貸を理由に賃貸借契約を解除することはできない」ので・・○。

 

(2) ×。「原賃貸借契約の債務不履行解除と承諾転貸終了の可否」

確かに、転貸借契約は原賃貸借契約を基礎として成り立つものである。

そこで↓

承諾転貸で賃借人Aの債務不履行を理由に原賃貸借契約解除された場合、転貸借契約は終了するのか問題となる。

この点↓

判例は、原賃貸借が賃料不払解除の場合,承諾転貸であっても賃貸人Bを保護するために、転借人Dに対して目的物の返還を請求してきたときに,AD間の転貸借契約は終了するとした。

従って↓

「AD間の転貸借契約は原則として終了しない」とするのは・・×。

 

(3) ○。「譲渡承諾の相手方」

確かに、賃貸借契約は、債権であることから信頼関係を基礎として成立するもので、賃借人が、第三者に賃借権を譲渡するには貸主の承諾が必要となる

そこで↓

賃貸人の譲渡の承諾の相手方が問題となる。

この点↓

判例は、賃貸人のなす譲渡の承諾は、単に譲渡の事実を認めるにすぎないことから、賃借人Aに対するものでも、譲受人Eに対するものでも有効であるとした。

従って↓

「Aに対するものでも、Eに対するものでも有効である」ので・・○。

 

(4) ○。「転借人が明渡請求された場合の転貸人への賃料支払拒否の可否」

確かに、賃貸借契約は、債権であることから信頼関係を基礎として成立するもので、賃借人が、第三者に賃借権を譲渡するには貸主の承諾が必要となる。また、転貸借契約は原賃貸借契約を基礎として成り立つものである。

そこで↓

転借人Fが賃貸人Bから無断転貸を理由に明渡請求を受けた場合、Fは明渡請求以後の転貸人Aに対する賃料の一部の支払を拒むことができるか問題となる。

この点↓

判例は、無断転貸は解除事由であることから、転貸人保護の観点より、無断転貸を理由にFがBから明渡請求を受けた場合には、Fは明渡請求以後のAに対する賃料の一部又は一部の支払を拒むことができる。

従って↓

「(転借人)Fは明渡請求以後の(転貸人)Aに対する賃料の一部又は一部の支払を拒むことができる」ので・・○。

 

H18年〔問13〕・・・「借地借家法(借地)」・・正解率約40%

 自らが所有している甲土地にを有効利用したいAと、同土地上で事業を行いたいBとの間の契約に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 甲土地につき、Bが建物を所有して小売業を行う目的で公正証書によらずに存続期間を35年とする土地の賃貸借契約を締結する場合、約定の期間、当該契約は存続する。しかし、Bが建物を建築せず駐車場用地として利用する目的で存続期間を35年として土地の賃貸借契約を締結する場合には、期間は定めなかったものとみなされる。

2 甲土地につき、Bが1年間の期間限定の催し物会場としての建物を建築して一時使用する目的で土地の賃貸借契約を締結する場合には、当該契約の更新をしない特約は有効である。しかし、Bが居住用賃貸マンションを所有して全室を賃貸事業に供する目的で土地の賃貸借契約を締結する場合には、公正証書により存続期間を15年としても、更新しない特約は無効である。

3 甲土地につき、小売業を行うというBの計画に対し、借地借家法が定める要件に従えば、甲土地の賃貸借契約締結によっても、又は、甲土地上にAが建物を建築しその建物についてAB間で賃貸借契約を締結することによっても、Aは20年後に賃貸借契約を更新させずに終了させることができる。

4 甲土地につき、Bが建物を所有して小売業を行う目的で存続期間を30年とする土地の賃貸借契約を締結している期間の途中で、Aが甲土地をCに売却してCが所有権移転登記を備えた場合、当該契約が公正証書でなされていても、BはCに対して賃借権を対抗することができない場合がある。

本問は、借地借家法(借地)の手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

 

H20年〔問13〕・・・「借地借家法(借地)」・・正解率約55%

 Aが所有している甲土地を平置きの駐車場用地として利用しようとするBに貸す場合と、一時使用目的ではなく建物所有目的を有するCに貸す場合とに関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 AB間の土地賃貸借契約の期間は、AB間で60年と合意すればそのとおり有効であるのに対して、AC間の土地賃貸借契約の期間は、50年が上限である。

2 土地賃貸借契約の期間満了後に、Bが甲土地の使用を継続していてもAB間の賃貸借契約が更新したものと推定されることはないのに対し、期間満了後にCが甲土地の使用を継続した場合には、AC間の賃貸借契約が更新されたものとみなされることがある。

3 土地賃貸借契約の期間を定めなかった場合、Aは、Bに対しては、賃貸借契約開始から30年が経過すればいつでも解約の申入れをすることができるのに対し、Cに対しては、賃貸借契約開始から30年が経過しなければ解約の申入れをすることができない。

4 AB間の土地賃貸借契約を書面で行っても、Bが賃借権の登記をしないままAが甲土地をDに売却してしまえばBはDに対して賃借権を対抗できないのに対し、AC間の土地賃貸借契約を口頭で行っても、Cが甲土地上にC所有の登記を行った建物を有していれば、Aが甲土地をDに売却してもCはDに対して賃借権を対抗できる。

本問は、借地借家法(借地)の正確に理解しているかが問われた複合問題。整理の手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

「解 説」・・・・・正解(4)

(1)×。「借地契約期間の制限」

確かに、借地借家法は、建物所有を目的とする借地権に限定されるので、AB間の賃貸借は民法が適用され、AB間の賃貸借は借地借家法が適用される。

そこで↓

民法上のAB間の土地賃貸借契約の期間は、20年を超えることはできない(604条)。一方、AC間の土地賃貸借契約の期間は、借地借家法により30年以上であれば、上限はない(3条)。

従って↓

AB間の土地賃貸借契約の期間は、AB間で60年と合意すればそのとおり有効であるのに対して、AC間の土地賃貸借契約の期間は、50年が上限である」とするのは・・×。

 

(2)×。「法定更新制度の存否」

確かに、法定更新制度は借主を保護したものである。

そこで↓

民法上の賃貸借(619条1項)及び借地借家法上の賃貸借(5条1項)の両者に法定更新制度は存する。

従って↓

「土地賃貸借契約の期間満了後に、Bが甲土地の使用を継続していてもAB間の賃貸借契約が更新したものと推定されることはない」とするのは・・×。

 

(3)×。「期間を定めのない建物所有目的とする借地契約期間」

確かに、期間を定めのない借地契約はいつでも解除ができるのが原則である。

そこで↓

民法上の賃貸借は、解約申し入れ後1年経過すれば終了する(617条1項)。一方、借地借家法上の賃貸借は、借主保護を強化し30年となる(3条)。

従って↓

Aは、Bに対しては、賃貸借契約開始から1年が経過すればいつでも解約の申入れをすることができるのに対し、Cに対しては、賃貸借契約開始から30年が経過しなければ解約の中入れをすることができない」とするのは・・×。       

 

(4)○。「借地上の建物登記と借地権の対抗力の有無」

確かに、債権である借地権の第三者対抗力は登記が原則である。

そこで↓

民法上の賃貸借は、当該賃借権の登記が第三者対抗要件となる。一方、借地借家法上の賃貸借は債権である借地権には登記請求権がないことから、借地上の建物登記をもって対抗力を認め借地人の保護を図った(10条1項)。

              従って↓

AC間の土地賃貸借契約を口頭で行っても、Cが甲土地上にC所有の登記を行った建物を有していれば、Aが甲土地をDに売却してもCDに対して賃借権を対抗できる」ので・・○。

 

H20年〔問10〕・・・「敷金」・・正解率約58%

 Aは、自己所有の甲建物 (居住用) をBに賃貸し、引渡しも終わり、敷金50万円を受領した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 賃貸借が終了した場合、AがBに対し、社会通念上通常の使用をした場合に生じる通常損耗について原状回復義務を負わせることは、補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているなど、その旨の特約が明確に合意されたときでもすることができない。

2 Aが甲建物をCに譲渡し、所有権移転登記を経た場合、Bの承諾がなくとも、敷金が存在する限度において、敷金返還債務はAからCに承継される。

3 BがAの承諾を得て賃借権をDに移転する場合、賃借権の移転合意だけでは、敷金返還請求権 (敷金が存在する限度に限る。) はBからDに承継されない。

4 甲建物の抵当権者がAのBに対する賃料債権につき物上代位権を行使してこれを差し押さえた場合においても、その賃料が支払われないまま賃貸借契約が終了し、甲建物がBからAに明け渡されたときは、その未払賃料債権は敷金の充当により、その限度で消滅する。

本問は、敷金を切り口に賃貸借契約を正確に理解しているかが問われた複合問題。賃貸借の手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

「解 説」・・・・・正解(1)

(1)×。「敷金による通常損耗補修費への充当の可否」

確かに、敷金は、賃貸借契約に基づく賃借人の全ての債務を担保するものであり、社会通念上通常の使用をした場合に生じる通常損耗の原状回復義務に対して敷金をもって充当できるのか問題となる。

この点↓

判例は、補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているなど、その旨の特約が明確に合意されたときは、敷金をもって充当できるとする。

従って↓

「その旨の特約が明確に合意されたときでもすることができない」とするのは・・×。

 

(2)○。「賃貸人の地位の移転と敷金の承継の可否」

確かに、敷金は、賃貸借契約に基づく賃借人の全ての債務を担保するものであり、賃貸目的建物が譲渡され、買主に所有権移転登記をした場合、すなわち、賃貸人の地位の移転により、敷金も当然に買主(=新賃貸人)に承継されるのか問題となる。

この点↓

判例は、賃貸人の地位の移転の場合、建物賃借人保護のため賃借人(B)の承諾がなくとも、敷金が存在する限度(債務不履行に充当した残額)において、当然に敷金返還債務は(旧賃貸人)Aから(新賃貸人)Cに承継されるとする。

従って↓

Bの承諾がなくとも、敷金が存在する限度において、敷金返還債務はAからCに承継される」ので・・○。

 

(3)○。「賃借人の地位の移転と敷金の承継の可否」

確かに、敷金は、賃貸借契約に基づく賃借人の全ての債務を担保するものであり、賃借を譲渡した場合、すなわち、賃借人の地位の移転により、当然に敷金返還請求権も新賃借人に承継されるか問題となる。

この点↓

判例は、敷金が賃貸借契約に基づく賃借人の全ての債務を担保するものである以上、他人の債務を担保することになるので、賃借人の地位の移転により当然には敷金は承継されないとする。

従って↓

「賃借権の移転合意だけでは、敷金返還請求権(敷金が存在する限度に限る。)は(旧賃借人)Bから(新賃借人)Dに承継されない」ので・・○。       

 

(4)○。「敷金の充当と未払賃料債権の消滅の可否」

確かに、敷金は、賃貸借契約に基づく賃借人の明け渡しまでの全ての債務を担保するものである。

そこで↓

抵当権者が賃料債権に物上代位権を行使してこれを差し押さえた場合、その賃料が支払われないまま賃貸借契約が終了し、明け渡されたときは、その未払賃料債権は敷金の充当により、その限度で消滅する。

              従って↓

「その未払賃料債権は敷金の充当により、その限度で消滅する」ので・・○。

 

H17年〔問11〕・・・「不法行為(工作物)」・・正解率約45%

 Aは、所有する家屋を囲う塀の設置工事を業者Bに請け負わせたが、Bの工事によりこの塀は瑕疵がある状態となった。Aがその後この塀を含む家屋全部をCに賃貸し、Cが占有使用しているときに、この瑕疵により塀が崩れ、脇に駐車中のD所有の車を毀損させた。A、B及びCは、この瑕疵があることを過失なく知らない。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 Aは、損害の発生を防止するのに必要な注意をしていれば、Dに対する損害賠償責任を免れることができる。

2 Bは、瑕疵を作り出したことに故意又は過失がなければ、Dに対する損害賠償責任を免れることができる。

3 Cは、損害の発生を防止するのに必要な注意をしていれば、Dに対する損害賠償責任を免れることができる。

4 Dが、車の破損による損害賠償責任請求権を、損害及び加害者を知ったときから3年間行使しなかったときは、この請求権は時効により消滅する。

本問は、不法行為(工作物)を正確に理解しているか否かの問題。過失責任制度の対極にある無過失責任制度との対比の手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

「解 説」・・・・正解(1)

(1)×。「建物所有者の賠償責任と過失の要否」

確かに、民法は、「過失責任」を原則とするが、土地の工作物等についてはそもそも危険であることから「無過失責任」とした。

そこで↓

土地の工作物等の設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害が生じた場合、仮に工作物占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしていたときは、当該占有者は過失責任であるが、工作物所有者は、損害の発生を防止の注意をしていたとしても損害賠償をしなければならないこととなる。

従って↓

「(所有者)Aは、損害の発生を防止するのに必要な注意をしていれば、(被害者)Dに対する損害賠償責任を免れることができる」とするいのは・・×。

工作物占有者

過失責任

工作物所有者

無過失責任

(2)○。「請負人の故意・過失と不法行為責任の成否」

確かに、不法行為責任は、原則として故意・過失が必要である(過失責任)。

そこで↓

民法は、請負人の不法行為責任についても、その瑕疵を作り出したことに故意や過失がなければ、損害賠償責任は負わないこととなる。

従って↓

「Bは、瑕疵を作り出したことに故意又は過失がなければ、Dに対する損害賠償責任を免れることができる」ので・・○。

*請負人の注文者への担保責任は無過失責任であるが、通常の不法行為責任には行為者の故意または過失が必要である。

 

(3)○。「工作物占有者の不法行為責任」

確かに、民法は、「過失責任」を原則とするが、土地の工作物等についてはそもそも危険であることから「無過失責任」とした。

しかし↓

土地の工作物等の設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害が生じた場合、占有者は過失責任を負うので、仮に工作物占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしていたときは、損害賠償責任を負わないこととなる。

従って↓

「Cは、損害の発生を防止するのに必要な注意をしていれば、Dに対する損害賠償責任を免れることができる」ので・・○。

 

(4)○。「不法行為の損害賠償請求権行使の期間の制限」

確かに、不法行為による損害賠償請求権は債権であるが、法律関係の早期安定化のために、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間不行使のときは,時効消滅する。また、不法行為の時から20年を経過した場合も、損害賠償請求権は消滅する。

          従って↓

「損害及び加害者を知ったときから3年間行使しなかったときは、この請求権は時効により消滅する」ので・・○。

 

H19年〔問5〕・・・「不法行為の損害賠償」・・正解率約20%

 不法行為による損害賠償に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 不法行為による損害賠償の支払債務は、催告を待たず、損害発生と同時に遅滞に陥るので、その時以降完済に至るまでの遅延損害金を支払わなければならない。

2 不法行為によって名誉を毀損された者の慰謝料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明しなかった場合でも、相続の対象となる。

3 加害者数人が、共同不法行為として民法第719条により各自連帯して損害賠償の責任を負う場合、その1人に対する履行の請求は、他の加害者に対してはその効力を有しない。

4 不法行為による損害賠償の請求権の消滅時効の期間は、権利を行使することができることとなった時から10年である。

本問は、不法行為の損害賠償についての複合問題。整理の手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

 

H18年〔問12〕・・・「相続と各種制度」・・正解率約54%

 成年Aには将来相続人となるB及びC (いずれも法定相続分は2分の1) がいる。Aが所有している甲土地の処分に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 Aが精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く情況になつた場合、B及びCはAの法定代理人となり甲土地を第三者に売却することができる。

2 Aが 「相続財産全部をBに相続させる」 旨の有効な遺言をして死亡した場合、BがAの配偶者でCがAの子であるときはCには相続財産の4分の1の慰留分があるのに対し、B及びCがAの兄弟であるときはCには遺留分がない。

3 Aが 「甲土地全部をBに相続させる」 旨の有効な遺言をして死亡し、甲土地以外の相続財産についての遺産分割協議の成立前にBがCの同意なく甲土地を第三者Dに売却した場合、特段の事情がない限り、CはBD間の売買契約を無権代理行為に準じて取り消すことができる。

4 Aが遺言なく死亡し、B及びCの協議により甲土地をBが取得する旨の遺産分割協議を有効に成立させた場合には、後になってB及びCの合意があっても、甲土地をCが取得する旨の遺産分割協議を成立させることはできない。

本問は、遺留分・遺産分割協議等相続と各種制度を正確に理解しているか否かの複合問題。類似制度・対極にある制度との対比の手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

 

H20年〔問12〕・・・「遺留分」・・正解率約55%

 Aには、相続人となる子BとCがいる。Aは、Cに老後の面倒をみてもらっているので、「甲土地を含む全資産をCに相続させる」 旨の有効な遺言をした。この場合の遺留分に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 Bの遺留分を侵害するAの遺言は、その限度で当然に無効である。

2 Bが、Aの死亡の前に、A及びCに対して直接、書面で遺留分を放棄する意思表示をしたときは、その意思表示は有効である。

3 Aが死亡し、その遺言に基づき甲土地につきAからCに対する所有権移転登記がなされた後でも、Bは遺留分に基づき減殺を請求することができる。

4 Bは、遺留分に基づき減殺を請求できる限度において、減殺の請求に代えて、その目的の価額に相当する金銭による弁償を請求することができる。

本問は、遺留分を切り口に相続関係の正確に理解しているかが問われた複合問題。整理の手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

「解 説」・・・・・正解(3)

(1)×。「遺留分侵害による遺言の効力」

確かに、遺留分は、被相続人の扶養義務に基づく相続人の生活保障を図る制度である。また、遺言制度は遺言者の生前の最終意思を尊重するものである。

そこで↓

相続人(B)の遺留分を侵害する被相続人(A)の遺言の効力が問題となる。

この点↓

民法は、遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び贈与の減殺を請求することができる(1031条)ので、遺留分減殺請求により、その遺留分を超える限度で無効となる。

従って↓

「その限度で当然に無効である」とするのは・・×。

 

(2)×。「遺留分放棄の要件」

確かに、遺留分は、被相続人の扶養義務に基づく相続人の生活保障を図る制度であるが、利益といえども強要するのは妥当でないことから遺留分権利者に放棄の自由を認めている。

しかし↓

生前の遺留分放棄については、不正防止の観点より遺留分権利者の真意確認のため、1043条1項は、「相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる」と規定した。

従って↓

「書面で遺留分を放棄する意思表示をしたときは、その意思表示は有効である」とするのは・・×。

 

(3)○。「特定遺贈による遺留分侵害と遺留分減殺請求の可否」

確かに、特定遺贈とは、遺言により特定の財産を贈与するもので、そこ効力は遺贈者の死亡により効力が生じ、その所有権移転登記がなされた後でも、遺留分に基づき減殺を請求ができるか問題となる。

この点↓

民法1042条は、「減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から10年を経過したときも、同様とする」と規定した。

従って↓

Bは遺留分に基づき減殺を請求することができる」ので・・○。       

 

(4)×。「遺留分権利者の金銭弁償請求の可否」

確かに、遺留分は、被相続人の扶養義務に基づく相続人の生活保障を図る制度である。

そこで↓

遺留分減殺請求に代えて、その目的の価額に相当する金銭による弁償を請求することができるか問題となる。

この点↓

民法1041条1項は「受贈者及び受遺者は、減殺を受けるべき限度において、贈与又は遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免れることができる」と規定した。

              従って↓

(遺留分権利者)Bは「減殺の請求に代えて、その目的の価額に相当する金銭による弁償を請求することができる」とするのは・・×。

 

H17年〔問14〕・・・「建物の区分所有」・・正解率約30%

 建物の区分所有等に関する法律に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 共用部分であっても、規約で定めることにより、特定の区分所有者の所有とすることができる。

2 専有部分であっても、規約で定めることにより、敷地利用権と分離して処分することができる。

3 構造上区分所有者全員の共用に供されるべき建物の部分であっても、規約で定めることにより、特定の区分所有者の専有部分とすることができる。

4 区分所有者の共有に属さない敷地であっても、規約で定めることにより、区分所有者の団体の管理の対象とすることができる。

本問は、建物の区分所有の手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

「解 説」・・・・正解(3)

(1)○。「共用部分の特定の区分所有者の所有の可否」

確かに、共用部分は、区分所有者全員の共有に属するのが原則である。

しかし↓

区分所有法は、共用部分であっても,規約で定めることにより,特定の区分所有者の所有*とすることができるとした。

従って↓

「共用部分であっても、規約で定めることにより、特定の区分所有者の所有とすることができる」ので・・○。

原則

区分所有者全員の共有に属する

例外

①一部共用部分は、共用すべき区分所有者の共有に属する。

②規約の定めで、特定の区分所有者の所有とすることができる

 

(2)○。「敷地利用権と分離して処分の可否」

確かに、専有部分は敷地利用権と分離して処分できないのが原則である。

しかし↓

区分所有法は、敷地利用権は,規約に別段の定めがあるときは,区分所有者は,専有部分と敷地利用権を分離して処分することができるとした。

従って↓

「専有部分であっても、規約で定めることにより、敷地利用権と分離して処分することができる」ので・・○。

原則

専有部分は敷地利用権と分離して処分できない。

例外

規約に定めがある場合、専有部分と敷地利用権を分離処分できる。

*共用部分は,区分所有法に別段の定めがある場合を除き、専有部分と分離処分はできない。

 

(3)×。「構造上の共用部分の専有部分とすることの可否」

確かに、区分所有者全員の共用に供されるべき建物の部分のは、「規約共用部分」と構造上の「法定共用部分」がある。

しかし↓

構造上区分所有者全員の共用に供されるべき建物の部分は、不可欠なものであることから、規約で定め特定の区分所有者の専有部分とすることはできない。

従って↓

「構造上区分所有者全員の共用に供されるべき建物の部分であっても、規約で定めることにより、特定の区分所有者の専有部分とすることができる」とするのは・・×。

 

(4)○。「規約敷地の成否」

確かに、規約敷地は、区分所有建物の存しない敷地であることから、区分所有者の共有に属さないのが原則であるが、規約で定め区分所有者の団体の管理の対象とすることができる。

          従って↓

「区分所有者の共有に属さない敷地であっても、規約で定めることにより、区分所有者の団体の管理の対象とすることができる」ので・・○。

原則

区分所有建物の存する敷地、敷地利用権あり。

例外

区分所有建物の存しない敷地、規約で敷地利用権をとすることだできる(規約敷地)。

 

H18年〔問16〕・・・「建物の区分所有」・・正解率約45%

 建物の区分所有法等に関する法律 (以下この問において「法」という。) に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 集会の招集の通知は、会日より少なくとも2週間前に発しなければならないが、この期間は規約で伸縮することができる。

2 集会においては、法で集会の決議につき特別の定数が定められている事項を除き、規約で別段の定めをすれば、あらかじめ通知した事項以外についても決議することができる。

3 集会の議事録が書面で作成されているときは、議長及び集会に出席した区分所有者の2人がこれに署名しなければならないが、押印は要しない。

4 規約の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示しなければならないが、集会の議事録の保管場所については掲示を要しない。

本問は、建物の区分所有の手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

 

「解 説」・・・・正解(2)

(1)×。「集会の招集の通知日」

確かに、区分所有の場合には、総区分所有者の共同の利益と各区分所有者の利益の調整が必要となり、その調整は規約のほか集会での決議で決することとなるので、集会の招集の通知は、会議の目的たる事項について,集会の会日までに十分に検討するために、会日より少なくとも1週間前に発しなければならない。

従って↓

「会日より少なくとも2週間前に発しなければならない」とするのは・・×。

 

(2)○。「通知した事項以外の決議の可否」

確かに、区分所有の場合には、総区分所有者の共同の利益と各区分所有者の利益の調整が必要となり、その調整は規約のほか集会での決議で決することとなるので、集会では,原則として事前に通知した会議の目的たる事項のみを決議できる。

         しかし↓

規約で別段の定めをすれば,あらかじめ通知した事項以外についても決議することができる。

従って↓

「あらかじめ通知した事項以外についても決議することができる」ので・・○。

 

(3)×。「議事録の署名押印の要否」

確かに、集会での決議事項・内容は、区分所有者の権利・義務に関係することとなるので、集会議事録が書面で作成された場合は、議事内容の真実性を担保するため、議長及び出席区分所有者の2人が署名・押印をすることが必要である。

従って↓

「押印は要しない」とするのは・・×。

 

(4)×。「規約・議事録の保管場所の掲示」

確かに、集会での決議事項・内容は、区分所有者の権利・義務に関係することとなるので、決議事項・内容の周知徹底を図るために、規約の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示し、集会の議事録の保管場所についても同様である。

従って↓

「集会の議事録の保管場所については掲示を要しない」とするのは・・×。

 

 

 

 

 

H19年〔問15〕・・・「建物の区分所有」・・正解率約30%

 建物の区分所有等に関する法律に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 規約は、管理者が保管しなければならない。ただし、管理者がないときは、建物を使用している区分所有者又はその代理人で規約又は集会の決議で定めるものが保管しなければならない。

2 最初に建物の専有部分の全部を所有する者は、公正証書により、建物の共用部分を定める規約を設定することができる。

3 規約を保管する者は、利害関係人の請求があったときは、正当な理由がある場合を除いて、規約の閲覧を拒んではならない。

4 規約の保管場所は、各区分所有者に通知するとともに、建物内の見やすい場所に掲示しなければならない。

本問は、建物の区分所有の手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

 

H20年〔問15〕・・・「建物の区分所有」・・正解率約55%

 建物の区分所有等に関する法律に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 管理者は、少なくとも毎年2回集会を招集しなければならない。また、区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上を有するものは、管理者に対し、集会の招集を請求することができる。

2 集会は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数の同意があるときは、招集の手続きを経ないで開くことができる。

3 区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によって、管理者を選任し、又は解任することができる。

4 規約は、管理者が保管しなければならない。ただし、管理者がないときは、建物を使用している区分所有者又はその代理人で理事会又は集会の決議で定めるものが保管しなければならない。

本問は、建物の区分所有の手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

「解 説」・・・・・正解(3)

(1)×。「集会招集の年回数」

確かに、集会は、区分所有者間の区分建物の利用等各種の事項を決定する最高機関である。

そこで↓

管理者は、少なくとも毎年1回集会を招集しなければならない(34条2項)。また、区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上を有するものは、管理者に対し、会議の目的たる事項を示して、集会の招集を請求することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる(34条3項)。

従って↓

「少なくとも毎年2回集会を招集しなければならない」とするのは・・×。

 

(2)×。「集会招集の要件」

確かに、集会は、区分所有者間の区分建物の利用等各種の事項を決定する最高機関であることから、管理者は、少なくとも毎年1回集会を招集しなければならない(34条2項)。

しかし↓

集会は、区分所有者全員の同意があるときは、例外的に招集の手続を経ないで開くことができる(36条)。

従って↓

「区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数の同意があるときは」とするのは・・×。

 

(3)○。「管理者の選任・解任の可否」

確かに、区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる(3条)。

しかし↓

管理者が不適任となる場合もあることから、区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によつて、管理者を選任し、又は解任することができる(25条1項)と規定した。

従って↓

「管理者を選任し、又は解任することができる」ので・・○。       

 

(4)×。「規約の保管方法」

確かに、管理規約は区分所有建物の利用・管理等の事項が規定されたものであることから保管することが必要である。

そこで↓

管理規約は、管理者が保管しなければならない。ただし、管理者がないときは、建物を使用している区分所有者又はその代理人で規約又は集会の決議で定めるものが保管しなければならない(33条1項)と規定した。

              従って↓

「理事会」とするのは・・×。

 

H19年〔問16〕・・・「登記」・・正解率約15%

 不動産の登記に関する次の記述のうち、不動産登記法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 表題部所有者であるAから土地を買い受けたBは、Aと共同してBを登記名義人とする所有権の保存の登記の申請をすることができる。

2 共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記の申請は、当該権利の共有者であるすべての登記名義人が共同してしなければならない。

3 権利が法人の解散によって消滅する旨の登記がされている場合において、当該権利がその法人の解散によって消滅したときは、登記権利者は、単独で当該権利に係る権利に関する登記の抹消を申請することができる。

4 遺贈を登記原因とする所有権の移転の登記は、遺言執行者が指定されているか否かにかかわらず、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。

本問は、登記の手抜き勉強を突かれた問題・・・・パスするのはもったいない問題。

 

以上



 

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